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わたしの愛した「3」

パリオリンピックを観に行きました。
とはいえオリンピックの話ではなく、ここではオリンピックと共にアスリート人生を終えようとする1人の選手について記したいと思う。

パリまで行くなんて、正直直前まで全然信じていなかった。
行くの決めたのも7月に入ってからで、それまではでも、でもと行かない理由を並べ立てていた。

オリンピックかー、バレーだけ観れればいいかな。
他はまぁ、ニュースとかでちまちま観れば……でもテレビ苦手だし、スポーツ好きでもないし、多分そんなに観ないかな……。
そんな感じ。

母に「行っちゃう?」「行っちゃおうよ!」と言われた時も生返事をしていました。
だって、まさか本気だとは思わなかったんだもの。

わたしはバレーボールをもう10年以上前から生で観ていて、観るのが大好きで、
それでも「バレーボールが好き」と自覚したのはまだここ数ヶ月の話なのだ。多分まだ自覚して3ヶ月とか。
気づかせてくれた友人がいなければ気づくこともできなかった。

▼バレーボールが好きだと自覚した(友人に気づかされた)話はこちら


ちょっと話は逸れるのですが、この記事を書いて、そうかわたしはバレーボールが好きな人間なんだな、と自覚していたところに、パリ五輪の壮行会の知らせを受けて、バレともに入会したのが6/20。

バレともって入会する時にお気に入り選手を登録するんですよね。これが悩んだ。

わたしはそれまでも男バレより女バレがずっと好きだったのですが、
一番好きな選手を決めあぐねていました。
男バレなら柳田なんだけど、もう代表にはいないし、せっかくなら、女バレからお気に入りを選びたい。

誰が好きかなー、最初は木村沙織が好きで女バレ観戦にハマったんだよね。
やっぱり紗理那(日本代表に初選出されてからずっと紗理那と呼んでいます)が好きかなぁ。プレーはもちろん、キャプテンシーが素晴らしくてかっこいいし。10年以上見続けてるしなぁ。
石川真佑も好き。イタリアで大成長してカッコいい。
和田や荒木もどんどんカッコよくなっちゃって……。
ニチカも林も好きだなー。決められないよ〜〜〜。

決めあぐねて、自分が書いたこの記事(下記)を読み返した。
人に話す時、わたしは好きなものの話ばっかりするらしいから、読み返せば誰が好きかわかるかな、と思ったのだ。

古賀紗理那の話しかしてなくね?

と、そんなわけでようやく古賀紗理那が最推しの選手だと自覚したのが6/20でした。
10年もあったのに。ようやく気づいた。遅いよ。

まぁそんなわけで、好きな選手の自覚すらできていなかった自分がオリンピックのために、というかバレーボールのためにパリに行くところなど想像もつきませんでした。

でも、7/1に観に行く決心を固めてからは、早かった。
ツアーの検索、比較、応募、予約、予定の調整、職場への相談、エトセトラエトセトラ。
ダーーーッと行って、気づいたらパリ行きの権利を獲得していました。
日数にして、僅か3日ほど。

この行動力をさ、仕事にも発揮してほしいよ。

などと思いながら、パリ行きのワクワクを胸に、
当選した壮行会にウキウキで足を運んだのが7/8。

きっと、一生忘れないと思う。

アリーナの最前列よりも近い(アリーナ最前列でも観戦経験があります)、もう手を伸ばせば触れられる距離に花道があってそこを歩いていく紗理那や他の選手たち。
みんなの和気藹々とした雰囲気と、パリにかける意気込みや覚悟の重さ、どちらも感じて、ときめきとしか表せない感情を覚えた。

誰のコメントも素晴らしく、代表コメントで決意を表明したのは石川祐希選手だったけど、わたしの目には誰よりも紗理那がカッコよく映っていました。

あぁ、パリで彼女らに会えるんだな、もうほんとにワクワクが止まらない。
男子も女子も逸材揃いで、VNLで男女共に銀を持ち帰るほどの実力があって、今年が、パリがきっと最高の五輪になる。
ウッキウキで帰った翌日でした。

通知オンにしている古賀紗理那のインスタ投稿。
彼女、ストーリーズはよく上げるけど、フィード投稿は結構珍しい。
なんだろう?と思って見に行って、そこで見たのは

どん底もいいとこのどん底ですよ。

は? 紗理那引退?
オリンピックを最後に? 現役を? 引退?

昨日あんなにカッコいい姿を見て、パリも今後も楽しみ! と思っていたのに。
28歳、まだまだ若いじゃん。なんで?

もう涙が止まらなかった。わたしの推しってすぐいなくなるんですよ、本当に。

悲しいけど、最後に紗理那の勇姿を生で観れる、
それだけは本当に良かった。
観られるのはポーランド戦とブラジル戦の2戦だけ。
こんなことならもう少し無理して仕事休んでケニア戦も現地で見ることにすりゃあ良かった。

悔しい思いをしながらも、パリ、現地観戦。
ポーランド相手に1-3の善戦。
悔しいけれど、ブラジルもある。きっとそこでは勝ってくれる。
ブラジルだからきっとフルセットだ。

そう思って臨んだブラジル戦はまさかのストレート負け……。
もうボロボロに泣きました。

勘違いされると困るのですが、選手たちを責めるつもりなんて全くないです。
悪いプレーはほぼなく、ただただガビを警戒しすぎてしまったが故のマーク分散によるもの。
だけど、ガビをマークしないなんてあり得なかったから、選手も監督も絶対に間違ってない。

会場で半泣きで叫びながら応援して、マッチポイントが決まった瞬間、声も出せずにさめざめと泣いた。
選手インタビューを終えた紗理那の背中を拍手で送り出しながらまた泣いた。
どうすることもできなかった悔しさと涙を、パリの街角でガレットとともに飲み下した。

予選突破は苦しいかもしれない。
そんな不安を抱えて帰国。
でも、それでもわたしは、他の誰でもなく紗理那が紗理那自身のために、メダルを獲ってきてほしいよ。
帰国して、そう思ってまた泣いた。

ケニア戦は3-0のストレート勝利。
「ベスト8へ!望みつなぐ勝利」なんてキャッチコピーをテレビ画面の右上に眺めながら、
勝利記念撮影後に泣き崩れる紗理那にボロ泣きしました。

その後のインタビューで、眞鍋監督が
「この三年間、引っ張ってきた、古賀のチームなんでね」というようなことを言ってくれて、
そのあとの紗理奈もインタビューで涙で真っ赤にした目で、
「今日はもうキャプテンとかじゃなくて『バレーボールが大好きな古賀紗理那』として戦いました」と言っていて、
その言葉にさらに号泣しました。

日本が決勝Rに進む条件は、
残すアメリカvsフランスで、フランスがアメリカにストレート勝利をすることのみ。
でもフランスは世界ランク19位、アメリカは6位。

どんな番狂せが起こるかわからないから面白いのがスポーツだけど、かなり厳しいことはきっと紗理那にもわかっていて、
だからこそ「バレーボールが大好きな古賀紗理那」として戦ったんだなと。

この試合がきっと自分のバレー人生最後のものになるんだなと思っていたんだろうなと。

痛いほどよくわかるから、本当に本当に泣きました。

やっぱりケニア戦、生で観れば良かった。
紗理那の引退大会になるなんてわかってたら、なんとしてでも1試合でも多く観れるように調整したのに。
…なんて、たらればを言っても仕方ないのですけど。

フランスvsアメリカ戦、第一セットをTVerで観て、
もしかしたらいけるんじゃないかなんて期待しました。デュースが何度も続いて、一度はフランスがセットポイントも握って、
それでもアメリカが第1セットを獲得、女子の決勝R進出は絶たれ、画面をそっと閉じました。

フランスは、格上のアメリカ相手に27-29の善戦。
もちろん素晴らしいと思うし、フランスの選手たちは何も悪くないけれど、結果が全てのスポーツの世界でそれは、わたしにとっては何も救いにもならなかった。

思えば。
『ハイキュー‼︎』というバレー漫画にハマり、
そのあとすぐ女子バレーを大好きになったきっかけは、
木村沙織の存在でした。

背番号3を背負ってコートを飛び廻り鮮やかに得点を重ねる木村沙織の姿を観て、
アニメよりも漫画よりも、男子バレーよりも、
雷に打たれたように感動した。

そこで、日本代表デビュー戦の紗理那に出会い
木村沙織や長岡に囲まれて、点を決めると木村沙織に頭を撫でてもらって嬉しそうにしていた古賀紗理那を観て「可愛いなぁ」「すごいよく決めるなぁ」って思っていた。
可愛いなぁがいつのまにかカッコいいなぁになった。

リオで落選した日は木村沙織の部屋で木村沙織の胸で号泣したらしい。
憧れの選手だった木村沙織の番号を継いで、紗理那は日本代表チームのキャプテンになった。
もちろん、間に他にも3番を着ていた選手はいたし(島田春世とか、3だったはず)、他にもキャプテンもいた(東京五輪は石井優希だったはず)。

その選手たちにはとても失礼を承知だけど、わたしにとって「3」は木村沙織と古賀紗理那の番号なのだ。
わたしの愛した2人の選手がつけていた、キャプテンマークであるアンダーバー付きの「3」

これを胸に刻んで戦う紗理那はもう観れない。
「バレーボールが大好きな古賀紗理那」は、わたしの前から去ってしまった。
そう思って泣きました。
この記事を書きながらもずっと泣いてる。
今のわたしは、「古賀紗理那」の5文字で涙が止まらない。

もっともっと、紗理那のプレーを見たかった。
初の代表入りから今日までずっと、日本代表の紗理那はカッコよくて、本当にずっとヒーローだった。
もっとちゃんと追っ掛ければ良かった。Vリーグ観に行けばよかった。
後悔してももう遅い。

古賀紗理那選手、貴女の強靭で鮮烈で美しいバレーボールが大好きです。
今後、これ以上に応援できる選手に出会えるのかな。わからない。
東京でもパリでも悔しい結果になってしまったからと、翻意して続けてくれてもいい。
荒木絵里香や岩崎こよみみたいに、例えば子どもを産んで帰ってきたっていい。
どんな形であれ、またいつか貴女に会えたら嬉しいなと思う。
その時はきっと、また日の丸を背負って、大声を張り上げながらコートの上に飛翔してください。

紗理那の引退が確定して、一晩が明けました。
一睡もできていない。
パリから帰国して、今日から仕事です。
あの眩くきらめくコート上で翔ける紗理那を眼裏に描きながら、しばらくはぼうっと過ごすことでしょう。
今更ながら、スマホの壁紙を「3」を背負って戦う紗理那に変えました。

引退会見はいつだろう、きっとしっかり見届けます。
次にアンダーバー付きの番号を胸に抱く選手が誰になるのか、
その「3」を背負う選手をわたしはいっとう愛すことができるのか。

バレーボールにハマったほぼ初期からずっと応援していた選手の引退は、とてもとても寂しいです。
今後、誰を応援すればいいのかな。

わからないけれど、それでもバレーボールがきっとずっと好きだと思う。
ここ1年くらい、やってみたいと思っていたし、紗理那の引退を機に始めてみようかな、なんて。
好きな選手の引退を機に新たなことに踏み出すなんて、おかしいだろうか。

でも、この引退を寂しいだけのものにしたくない。
そう思える。
そう思わせてくれるくらい、紗理那のプレーが大好きでした。
貴女のおかげで、こんなにもバレーボールが面白いと知ることができた。こんなにもバレーボールを好きになれた。

感謝してもしきれません。本当にありがとう。
そして、本当にお疲れ様でした。

また会える日が来ると信じて。

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