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第2話 名前のない展望台ー「関係案内所」と「つくる」の関係

 先週の授業「大村航太郎解体新書ー人生の頂はどこにあるか(人生の頂に関する対話)」を終えて、私(山崎)は大村君と宮崎君と富良野へ旅に出た(詳細は「都市と地方を行ったり来たりー学友っていいもんだ(仮)」を参照されたい。※後日執筆予定)。
 対談では、大村君の高校や大学時代の話を聞きながら、自分のことを考えていた。まさに「対話」がそこにあった。目の前の対話に集中しすぎて、オーディエンス(受講生)のことを忘れ、気がつけば、授業時間が終了していた。二人の個人的な話が多かったので、受講生には退屈な部分もあったかもしれない。でも、この二人の対話を通じて、何か自分のことを少しでも考える時間になったら嬉しい。それは、「関係案内所」のラウンジで旅人の話を、傍らで何となく聞いている感覚に近いのかもしれない。
 I部~Ⅱ部の授業を通して、今回は池内大輝君が書記を担当してくれた。彼は、もう一人の主役であると同時に、この対話を第三者の視点から見守る存在だった。休憩時間に、ふと彼が「やっぱり自分たちの大学時代はコロナで全然通えなくて」ともらした瞬間が、今回の授業(芝居)のハイライトだったと思う。二人の対談という即興芝居を聞き書きして(書記)、彼の中に何らかの意味が降りてくる。そして、その言葉が休憩時間という余白で、ふと漏れ出てくる。この雑談的な時間は、コロナ禍におけるzoom的な時間(授業(目的)以外の時間が捨象されたオンライン)から失われたものである。
 池内君は、対談の中で私が発した「関係案内所」についての疑問に関心を持っていた。私は地域おこし協力隊に着任して「関係案内所をつくる」というミッションをもらったときから、まちのいたるとこにある「関係者以外立ち入り禁止」の看板が気になりだした。大学の構内やショッピングモール、世の中のあらゆるところに、この看板が設置されているが、果たして、これは何と何を隔てていて、何を私たちに見せないようにしているのだろうか。とある場所で見つけたその看板には、下に英訳がついていて「authorized personnel only」とあった。authorizeには、認可された、権限のようなニュアンスがあるが、それは私がイメージする関係案内所とは異なるものであった。どこかのまちや人と関わりができたとき、その関わりを「関係者」と呼んでしまうとしたら、たちまち、関係者以外は蚊帳の外になってしまう。関係案内所とはもっと風通しのよいものではないだろうか。
 社会に広がる「関係者以外立ち入り禁止」の結界。もちろん裏側を全てさらけ出す必要はない。しかし、今の社会で大事な何かを隠し、見えなくしてしまうなら、その看板はときおり引っこ抜く必要があるのではないか。私たちは、今回の大村君との対談で、その看板の根を少し引っ張ることが出来たのかもしれない。
 授業が終わり、翌日の富良野旅から札幌へ戻る前に、私たちhomeport一行は、池内君の地元である「苫小牧」に立ち寄った。彼が指定した場所は自らの母校である苫小牧南高校。彼は高校の隣にあるリサイクルショップの前で待っていた。ショップの中には、ガラクタのようなものも含めて、おそらくこの地域の人が落としていったモノの痕跡が広がっていた。彼との事前のやり取りで「地元には何もない」ということだったので、私がグーグルマップで事前に調べ、苫南(とまなん)高校付近にある沖縄をコンセプトにした「クプクプカフェ」にいった(後日談として、池内君は、地元で人気のカフェ2件を候補として考えてくれていた)。
 住宅街の1軒家を改装した店内は、まさに沖縄の時間が流れ、2階のギャラリーには琉球ガラスだけでなく、オーナーらしき人が採集したアジアの色鮮やかな蝶の標本などが展示されていた。

 そこで、池内君が生き物が好きなこと、自宅で自ら100匹の熱帯魚を飼育して、それが理由で地元から北海学園まで通っていることなどを聞いた。書記での鋭い観察眼は、きっと生活の中での絶え間ない生き物との対話から育まれたものなのだろう。そして、目の前には海が広がっている。大学で出会う「北海学園の学生」ではなく、「苫小牧で生きる青年」としての池内君に出会い直した気がした。
 最後に、私が海が見たいと言うと、彼は、高校の奥にある高台を案内してくれた。その高台とは、観光地ではなく、普通の住宅街である。海にまなざしを向けた(眺望を目的とした)住宅が程よい感覚で並んでいる住宅街で車を止めて(宮崎君運転)、彼と少し地元の話をした。

 奥に広がる海の手前には彼の地元がある。そこからは旧苫小牧明徳小学校の校舎を利用した北海道苫小牧支援学校や、コメリパワー苫小牧西店が見える。この周辺は、かつてイオンの建設予定地だったらしいが、結果的に沼ノ端方面に「イオンモール苫小牧」が完成する。イオンによって「まちは吸われた」と池内君は語っていた。でも、そんな地元のことを海を臨みながら語る池内君は、この舞台の主役でしかなく、私はショートムービーを現場で目撃している錯覚に陥った。彼から発せられる言葉(セリフ)は、嘘がなく、自然で、その場所の空気と呼応して、何だか心地よかった。
 この即興的な演劇は、「つくる」ことを意図したものではない。一方で、金曜に授業があって、大村君と宮崎君がいて、池内君の地元へと赴く。そこには確実に「創造」があった。だから、これは「関係案内所」なのだ。
 今週15日の授業では、今年の5月に長井市地域おこし協力隊に着任した森知磨さんに「関係案内所」と「つくる」の関係について聞いてみたい。彼にとっての地元や母校とは何なのか、それは「つくる」ものなのか。森さん自身と出会える「対話」の場にしたい。


「「関係案内所」と「つくる」の関係」
日時:2023年12月15日(金)16:00~19:20(途中休憩20分)
会場:北海学園大学16番教室(観光経済論の授業内で実施)
出演者:森知磨、山崎翔 and more
書記:水口由菜、石丸竜生
参加者:「焼き鳥男子(仮)」、「もみじ」、「ねずみ荘」、「漢宿」、「Free宿」、「無愛着荘」、「天神」



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