[やきとり屋] 鳥貴族の歴史
今回は、やきとり屋の店舗を全国展開する、鳥貴族の歴史について解説します。
1985年(昭和60年) 、創業者の大倉さんが大阪府東大阪市に「じゃんぼ焼鳥 鳥貴族」の第1号店を開店しました。
創業者の大倉忠司(おおくら ただし)さんは、祖父が玩具製造会社「大倉商店」の創業者なので、幼い頃から祖父から
「[戦後、日本政府が国家あげて石炭と鉄鋼を量産するシステムを整備し、日本経済を復興させるため、国債を発行しまくりそれらを日銀に買ってもらい資金調達したため、市場に貨幣が過剰供給され、1949年には1945年の70倍になるほど物価が高騰した]、
[このままでは「過剰なインフレにより日本人の生活苦は続き、日本経済にはずっとアメリカの援助が必要になる」と思った米デトロイト銀行の頭取 ジョゼフ・ドッジが1949年から、政府が製鉄など民間企業に関わるのを辞め国家支出を抑える政策『ドッジ=ライン』を日本政府に飲ませたことにより、政府の民間企業への援助・公共事業などが減って日本に失業者があふれ、治安が悪くなった]
などの経済事件が沢山起きたが、そのような困難の中でも『部下の良いところを見つけ褒める』『自分のためではなく、みんなのために仕事し続ける』など人間関係を良好にしていれば 部下は付いてきてくれ、会社を続けていける」
など、経営者としての体験談を聞いていました。また大倉さんは、高校2年の夏にビアガーデンでアルバイトを始めると、まじめな仕事ぶりが認められ、16歳にして焼き鳥とおでんの部門を任されるほどでした。そこで飲食業の面白さに目覚めた大倉さんは、高校卒業後 調理師専門学校で和食・中華料理・洋食の調理法を一通り学んだ後、大阪を代表する高級ホテル「リーガロイヤルホテル」でウェイターの仕事をし、そちらでも「接客態度が良い」と高く評価されました。
そのため大倉さんは、お客としてよくホテルに訪れていた、一足先に独立した焼き鳥チェーンの店長に認められ、「俺はこれから、大きな焼き鳥チェーンをつくりたい。今社員になる人いないから、ウチに来てくれたら副社長にしてあげてもいいよ」と誘われ、1982年から 実家近くの焼き鳥屋で修行できることになりました。しかし、働くうち大倉さんは
「店舗展開し続けるには、生活に必要不可欠なインフラ的な会社になり水道会社・運送会社などのように人々に愛されなくてはならず、そのために飲食店は味の追求に全ての資金と時間を割くべきで、内装にお金をかけても仕方がないではないか。1974年に日本に上陸したセブン-イレブンが1980年に出店数1000店舗を達成したり、西友やイトーヨーカドーなどの大手スーパーが大型店舗の出せない地域にコンビニを次々出店させていることから考えても、焼き鳥を売る小売店は今後ますます増えていく。もっと本気で味を追求しないと、売れなくなるんじゃないか」
などと考えるようになり、彼と経営方針の考え方の違いから衝突するようになってきました。そこで独立したいと言うと、息子の活躍を期待した両親が家を担保に入れてまで資金をつくってくれたので、大倉忠司さんは1985年から「じゃんぼ焼鳥 鳥貴族」の店を開業できるようになりました。
鳥貴族社の経営陣は、会社の近所に、全品均一価格で繁盛していた個人店の炉端焼き屋があるのを見、真似したくなり1986年から全品均一価格制を導入し、全品250円均一としました。また、当時居酒屋ブームが来ていたので、同年 メニュー数が90品ほどある、オールジャンルの料理がそろうファミレスの様な総合居酒屋「えんにち」を開店しました。
しかし、総合居酒屋が増えすぎ価格競争になった上、この頃バブル景気で日本全体の土地の価格総額が1990年末時点で1985年末の2.4倍になるほど地価が値上がりしてきたので貧しい人々が節約するようになり、また国内に工場を建てると損をするので大企業が生産拠点を外国に移すなどしたため、1987年の輸出額は1986年より1兆9000億円以上減り、1987年の失業率は1986年より増加して日本経済は悪くなりました。
そのため、「えんにち」の店は1987年頃から売上げが減り始め、居酒屋ブームの終わりが見えてきた一方、鳥貴族の店の売上げは増加する一方だったので、1995年から鳥貴族社は居酒屋業態から撤退し、以降 焼鳥屋「鳥貴族」単一業態に集中することにしました。
鳥貴族社は年間2店舗出店にペースアップすることを決め、1997年からFC加盟者の募集を本格的に開始しました。
しかし、FC加盟者を増やすチャレンジを続けている内、FC店でも直営店と同じように味へのこだわりを持ってもらい、自然な笑顔で接客して売上げを上げてもらうためには、時間をかけて加盟店のオーナーさんと信頼関係をつくらなくてはいけないとわかったので、同社は2009年頃からFC加盟者の募集を取りやめました。
2003年、鳥貴族社は初めての空中階店舗となる「鳥貴族道頓堀店」を出店しました。空中階店舗とはビルの2階以上にある店舗のことで、こちらはよほど店に魅力がなければお客さんが来てくれないので、成功させるのが難しいと言われています。こちらの店が成功したので、2005年には思い切って東京に進出し、2004年より区内の事業所数・従業員数が減少しており、付加価値額も2004年の86.9%まで減少してしまい、景気が悪いので飲食店が成功しにくいとされていた中野区に関東1号店を建て、2009年に名古屋に店を建てました。この頃の鳥貴族社の勢いはすさまじく、2011年には200店舗達成、2012年には300店舗達成しました。同社は2014年にはジャスダックに上場し、大倉社長の「世界一の焼き鳥屋になるために、もっと大きく商売したいので、上場して社会的な信用力を高める」夢が叶いました。
その後 鳥貴族社は、さらに売買代金や株主数・時価総額を上げ、2015年に東証第2部に、2016年に東証第1部に市場変更しました。人手不足なので、アルバイトの時給を上げなくてはいけなくなった事と、野菜の価格の高騰のため、2017年10月から、均一価格280円から298円に価格変更しました。会社側も、値上げすれば客離れが起きると分かっていたので、客数の落ち込みを値上げによる客単価の上昇で吸収し、既存店売上げを増やすつもりだったそうですが、客離れは会社側の想定を超えていたため、2018年7月期の決算(税引き利益)は前年同期比32%減の6億6200万円にまで下がってしまいました。タッチパネルの導入を進め アルバイトの仕事量を減らして人件費を抑えたり、外国人スタッフの採用基準に「日本語理解能力があること」を加え円滑に接客ができるようにしたり、8月から日本マクドナルド社に倣って「タイトルアップ制度(レジのポジションを1人でできるようになったなど、ポジションを一つ覚える度 時給がアップする制度)」をスタートして社員の勤労意欲を上げ、損をなるべく少なくしたようです。
しかし2020年4月4日から4月12日までの9日間、コロナ禍の影響を受け、直営店舗全394件を臨時休業せざるを得なくなりました。はやく営業再開して、2017年7月時点では2016年7月時点より10億円以上「現金等(会社の貯金)」が増加し47億3575万円に達していたものの、そこから下がり続け、2019年7月には41億9074万円になってしまったほど、貯金のない会社にお金を貯蓄しようとした鳥貴族社でしたが、ワタミやコロワイドなどの大手外食企業が5月まで休業すると発表したため、鳥貴族社もこちらに合わせる形となり臨時休業を5月6日まで延長する事になりました。こちらにより、同社の2020年度の営業利益は2019年度のそちらより2億700万円ほど減りましたが、コロナ禍でも従業員の雇用を維持した企業に支払われる雇用調整助成金など、国からの協力金や助成金を受ける事ができたので、2020年度の「現金等」は2019年度のそちらの2倍以上に増えました。
2021年から、鳥貴族社はチキンバーガー専門店「TORIKI BURGER」の営業を事業内容とする株式会社TORIKI BURGERを設立しました。いずれアメリカにも鳥貴族の店をつくろうという目的で、大倉忠司社長自身が「アメリカのどこの地域が1番、日本食が成熟しているか」「アメリカのどこの地域に、アジア系のコミュニティが多いか」などを調べる目的でアメリカへ主張した際、現地でチキンバーガー専門店の盛り上がりがすさまじいことに気がつき、「これから日本で、チキンバーガー専門店を展開したら絶対流行る」と考え、株式会社TORIKI BURGERを設立しました。
TORIKI BURGER社のチキンバーガー専門店は現在、まだ3店舗しかありませんが、「味と低価格」を極めようという鳥貴族社の魂はしっかりと生きており、実際に店舗に行った人からも、「ケチの付け所のない完成度」「濃いソース味が好きな人もシンプルな味の好きな人も満足できる店」「高くも安くもない、ちょうど良い価格帯」と好評です。
鳥貴族社は、今 ウクライナ問題・円安・コロナ禍からの回復による需要増加から、原材料費やエネルギーコストが高騰していますが、コロナ禍からの回復が順調で飲み会需要が増加しているのと、9月からお客さんからのリクエストに応え、焼き鳥に合うビッグサイズのレモンサワー「メガレモンサワー」と甘辛キムチ「トリキのチャンジャ」をグランドメニューに加えたり、10月から35万食限定で宮崎県の稀少なブランド鶏「霧島鶏」の串焼きを提供したりと工夫したので、2024年7月期の営業利益(通期)は今年7月期のそちらより4億円以上大きい18億6100万円になる予想が出ています。
今後 鳥貴族社が、どのように世の中を変えていくのかに注目ですね。
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次回は、海鮮居酒屋の店舗を全国展開する、ワタミの歴史について解説します。お楽しみに。
サムネイル内で使った画像の引用元:
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%B3%A5%E8%B2%B4%E6%97%8F
https://torikizoku.co.jp/menu/yakitori/