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[回転寿司屋] 元気寿司の歴史

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まあに店主

 今回は、回転寿司の店舗を東日本で展開する、元気寿司の歴史について解説します。
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テトリス

 
クラシック


駆け出し


世界初の回転寿司店「元禄寿司」(1978年まで「コンベア旋回式食事台」の特許があったので、回転寿司店は元禄寿司しかなかった)とフランチャイズ契約を結んでいた元気寿司の創業者 齋藤文男さんは、1968年12月、栃木県宇都宮市に第一号店を作りました。
1962年に国道4号が宇都宮市内を通るようになり、宇都宮市と「高級な水産物が集まる築地」や「江戸時代 幕府が全国支配のために五街道を整備し関西から東北までのモノが集まるようにしたため、以後物流の要衝となった日本橋」を有する東京都中央区の間を行き来しやすくなったので、モノを仕入れやすくなったこともあり 1960年代の宇都宮市内では外食企業やカーエアコンの取り付け会社・研磨機や工具の販売社が設立されるなど、多くの雇用が生まれました。また同市では、1965年8月から下水処理が開始され、キレイな水が手に入るようになったので工場が建ち並ぶようになり、さらに人が住みやすくなったので、同市の人口は「1960年:24.0万人」から「1968年:28.8万人」に増え、まだまだ増える勢いでした。

小さいがたくましい


宇都宮市は
「[関東平野の北部に位置しているため平地が多く住宅地が多い] [宇都宮市の地下に、海底火山の噴火により作られた大谷石があるおかげで、火山灰が積もってできたので地盤が弱い地域が多い関東平野にしては珍しく、地盤が固く大きな建物を建てやすい]ので、オータニやジャスコなど駐車場付きスーパーマーケットが多数進出しており車があると便利」・「先述のように雇用も多いので住民に資金的余裕がある」
ので、宇都宮市は関東圏の市の中では自家用車保有率が高い方でした。そのため、1968年~1973年の栃木県の自家用車保有台数の増加率は東京都や神奈川県などより多いほどでした。栃木県では自家用車保有率が高いことを知った元気寿司経営陣は、業界でいち早く幹線道路沿いに出店を続け、店舗数を拡大しました。

もう一つ大事な元気寿司の特徴としては、同社は流行りの100円均一を採用していなかったと言うことです。
従業員の教育にもお金をかけ、接客の質も高くキッチンの消毒など衛生管理も完璧なので、一定数の人々から支持されており、2000年時の同社の株価は安値が422円と、当時 西日本地区と関東地区に物流センターを作り、客席数が通常店の2倍以上もある大型回転寿司店を全国で運営し 回転寿司界で圧倒的な売上高を誇っていたかっぱ寿司を運営するカッパ・クリエイトの同年の株価の安値より高いほどでした(2000年時のカッパ・クリエイトの株価の安値は362円)。また元気寿司は、2000年以前から新しいネタを使った新作寿司・サイドメニュー・デザートの商品開発も貪欲に進めてきたようです。
以上のように、元気寿司は社員教育や商品開発に十分に資金を使い、それらの資金を調達するために 決して安売りせず商品によっては150円・200円と、回転寿司店としては強気の価格を付けたので、同社は、2000年代 業界トップの売上高を出していたが、安さをウリにして 安売りしていた、かっぱ寿司を運営するカッパ・クリエイトより約0.6%も2004~2005年間の「負債合計が何%減ったか」が大きいです。
大成功を収めた元気寿司は、2002年9月に東証一部に上場し、2022年4月に東証一部の市場が廃止されるまで、上場を維持しました。

かっぱ寿司やあきんどスシローなど、元気寿司より資金力のある寿司屋が(カッパ・クリエイトの2004年時の現金等 169.8億円、元気寿司の同年の現金等 40.1億円。あきんどスシローの2006年度の経常利益 21.6億円、元気寿司の2006年度の経常利益 9.0億円)、2000年代 100円均一回転寿司の店舗数を増やしました。
もし元気寿司が安売りしていたとしたら、元気寿司はカッパ・クリエイトやあきんどスシローなど 元気寿司より資金力のある大手回転寿司屋に価格競争で敗れ、元気寿司は売上・利益を確保して、
[時価総額が10億円未満である状態が9ヶ月より長く続いたり、1年より長く債務超過(会社が所有する不動産や「貸した金を返してもらう権利」など資産を全て売却しても、借金を返済しきれない状態)が続いたら追い出される(2011年時点)]
東証一部に上場を維持する事はできなかったかも知れません。

足掻く


 2008年から、リーマンショック・原油価格高騰による国内企業の設備投資減速などからもたらされた絶望的な景気悪化や、外食企業間の競争激化が起きました。そして元気寿司の経営陣は、
「景気悪化で消費者の財布のヒモが固くなっている・競合店が多くなってきている今、コストをかけて店舗数を増やしまくっても 競合より提供する料理の質が悪ければ売上を確保できず儲からない」
と考えるようになり、新規出店にコストを割くよりもより高品質な食材を仕入れたり、従来の品質・安全性チェックは、最終製品の一部を抜き取って問題ないかチェックする(抜取検査)だけですが、これだけではなく加熱滅菌工程での温度や時間のキチッとした管理・最終製品になる前の品質チェックを行うHACCP方式を導入して、2008年10月に元気寿司の集中加工センターで「栃木県食品自主衛生管理認証制度」の認証を受け消費者に安全性をアピールしたり、宣伝に折り込みチラシを出すのに資金を使いました。
その結果、客から好評で主に栃木県民に支持され売上を確保することができ、元気寿司は2009年 店舗にタッチパネル・高速レーンを導入しサイドメニューを充実させたにもかかわらず、有利子負債(利子付きで返さなくてはいけない借金)が「2009年3月期:32.4億円」「2010年3月期:29.6億円」と減り、2009年4月に元気寿司は新潟県内の3店舗を営業する権利を買い取る事に成功しました。

しかし、2010年の国内寿司店の市場規模(年間売上額の合計)が2009年より下がっているところをみると、1970年代には珍しかった国内寿司店が需要以上に増えすぎ、客の奪い合い・競合間の競争が起きるようになり、競争に負けた店はつぎつぎ閉店してしまったことが分かります。また、くら寿司の水回収システムやタッチパネル注文システムのような人件費を減らすための工夫や、寿司皿にICチップを付け 皿ごとの販売動向を管理することで、誰がどの皿を取ったか分かり、どのネタが人気か・一人が大体何皿食べるのかなどを知ることができるスシローの「回転すし総合管理システム」のような食材ロスを削減する工夫がされたことにより、コストを下げることに成功したので、2000年代 100円均一回転寿司の店が増えました。2000年代末、元気寿司の競合は確実に増えてきたのでした。

店舗数を増やしてきていたかっぱ寿司・くら寿司・スシローなどは、大量に仕入れて安くしてもらうという技を使う事ができたので、1皿90円で販売したり、安売り系の回転寿司では提供が難しいだろうと考えられていた本マグロの大トロ寿司を1皿105円で提供したりできました。ところが、国内店舗数を増やさず 不採算店舗を次々閉店しているのでむしろ減らしており、2010年時点で競合のスシロー・かっぱ寿司・くら寿司より店舗数が少ない元気寿司は、大量仕入れで安くしてもらう技が使えませんでした。売上高が「2008年3月期:286.7億円」「2009年3月期:272.6億円」「2010年3月期:250.1億円」と減ってきたので慌てた元気寿司経営陣は、2009年からメニューを人気の商品だけに絞り込んで余計な仕入れコストがかからないようにしたり、同年からアメリカやインドネシアなどまだ回転寿司屋が少ない地域に積極的に出店して売上を稼ごうとしましたが、上手くいかず売上高は「2010年3月期:250.1億円」「2011年3月期:225.3億円」、営業利益は「2010年3月期:1.3億円」「2011年3月期:1.1億円」と下がってしまいました。

元気寿司は、2013年11月にかっぱ寿司と業務提携を締結し、同社とメニューを共同開発してより美味しい商品を作ったり、筆頭株主であるコメ卸最大手 神明ホールディングスに、元気寿司店舗の関西エリア進出を手伝ってもらいました。
店舗拡大に協力してもらう代わり、元気寿司は神明ホールディングスから寿司の材料のコメを購入し、さらに元気寿司がアメリカやインドネシアなどで店舗運営している間にためた、海外展開のノウハウを、海外に米を大量に販売しようと考えている神明ホールディングスに提供しました。
神明ホールディングスは2010年から物流のプロ 三菱商事と資本業務提携を結び、同社に協力してもらい2012年に広島県に精米工場を作ったり、販売所数・販売量を意欲的に増やしていました。そのため、神明ホールディングスには物流のノウハウが十分にあり、元気寿司は食材搬入ルートをシッカリ確保した上で回転寿司店舗を増やす事ができました。

その結果、元気寿司は売上高を「2013年3月期:246.0億円」「2014年3月期:268.9億円」と増やし、営業利益も「2013年3月期:7.0億円」「2014年3月期:10.2億円」と増やすことができ、元気寿司の業績が下がっていた2011年3月期に21.1億円だった同社の現金及び預金は、2014年3月期には36.8億円にまで達しました。
資金を確保した元気寿司は、2014年には中国やタイなどに新たに合計26店舗出店し、同年から回転レーンを無くし、全ての商品をタッチパネルで注文してもらい 店内で調理した商品を提供しても1皿100円という、オールオーダー型店舗(魚べい)の出店を急ピッチで進めることができました。

実は優秀


その後も元気寿司は、2015年9月にフィリピン 2016年12月にカンボジア 2017年4月にオーストラリア 2018年7月にミャンマーと、海外に店舗展開を進めました。
[海外では「キュウリやニンジン・パイナップルを砂糖と酢で漬け込んだシンガポールの漬け物 アチャをネタとして使用した寿司」や「アボカドロール(シンガポールでは、ミキサーですりつぶしたアボカドとチョコレートを混ぜたアボカドジュースが人気なので、アボカドはほぼ国民食)」など、なるべく現地の食文化に近づけた寿司を出すべきで、あまり「日本」を出すと売れないと考えられがちですが、日本のマンガ・アニメ・テレビドラマが大人気のシンガポールでは、むしろ「日本式」がウケると考え、元気寿司は国内店舗と同じようなエビやサーモン、玉子といった寿司を提供したところさすが日本食 低糖でヘルシーと喜ばれたり]、
[まだまだ貧しい家庭も多いのでエアコンが古く大量の電力を消費する・気温が日本より高くエアコン使用量が多い ため電気代が高くなりやすい東南アジア諸国の店舗では、回転レーンを導入しようとするとお金がかかるので 寿司を安売りできず苦戦したり]、
[監視が行き届かないためアメリカの子会社で資金が不正に流出したり]
と様々なことがありましたが、元気寿司の海外事業の売上高は、「2015年3月期:51.3億円」「2016年3月期:62.6億円」「2018年3月期:71.4億円」と増えました。2020年はじめからコロナ禍が始まり売上は落ちましたが、テイクアウトやデリバリー限定の営業を行ったり、2023年11月にシンガポールでなかなか見れないマグロの解体ショーを店舗で見られるようにして、客足を必死で引き止めたので、2024年3月期第3四半期(2023年4月1日~2023年12月31日)にも海外事業の売上高65.1億円は、元気寿司の総売上高461.3億円の内14.1%を占めるなど、海外事業は決してバカにできない同社の柱に成長しました。

また、国内でも
[回転レーンがないオールオーダー型店舗を積極出店したり、既存店舗をオールオーダー型に改装したりした結果、2020年3月には国内の元気寿司の店舗数合計の内86.1%がオールオーダー型店舗と言うことになり、電気代を下げて販管費を抑えることに成功する
(2023年の同社の販管費は競合 くら寿司のなんと25.1%、主に回転寿司店「かっぱ寿司」店舗を運営するカッパ・クリエイトの79.6%を達成)]、
[2017年3月から、現在地から5km以内にある元気寿司店舗を探したり 店舗の予約ができるアプリを使えるようにする]、
[2019年11月から、2019年3月に44.4億円あった現金等を34.7億円まで大胆に減らし、過去の注文データから食材の仕入れるべき量を予測するシステムを導入し、廃棄ロスの削減・発注業務の効率化を行う]、
[経験の無いコロナウイルスが猛威を振るい、各国がどうすべきか分からず、貿易禁止と再開を繰り返していたので経済の先行きが不透明で、実質総雇用者所得(家計全体の実質的な所得の合計)が年始から下がり続けていた2020年6月頃、景気低迷で価格志向が強まるとみて2貫で100円の「サーモン(増量)」や320円の「ジューシーな鴨肉を載せたそば」などお手軽&高品質な商品を増やす]
と闘いを続けた結果、元気寿司はコロナ禍の影響で2021年3月期に営業利益が赤字となってしまいましたが、翌年の2022年3月期から黒転する事ができました。2022年には既に黒字化しているというのは、競合のかっぱ寿司(カッパ・クリエイト)やくら寿司より早いです。

今後 元気寿司社が、どのように世の中を変えていくのかに注目ですね。

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お疲れ様です。
貴重な時間を割き、お読みくださいましてありがとうございました。

次回は、串カツ店を全国展開する、串家物語の歴史について解説します。
お楽しみに


まあに店主

サムネイル内で使った画像の引用元:
https://www.genkisushi.co.jp/recruit/

https://mrs.living.jp/tochigi/a_topics/article/4185935

https://www.genkisushi.co.jp/genki/menu/#cat3


まあに社の業績:


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その100円が、まあにのゼンマイを回す