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カットされた記事(2)「『明智軍記』現代語訳事始め」

「異国は知らず、本朝に於ひては、要害(ようがい)のため、昔は山を片取り、城を築きける也。近代は、鉄炮出(い)で来(き)ぬれば、古(いにし)への境地(きょうち)は用ひるに足らずと覚ゆ。当国にては、何れの処、居城に然るべきや。委(くわし)く申すべし」

第4話を現代語に訳するにあたり、最も難しいのがこの文です。意味は、「鉄砲の出現前後で城の立地条件はどう変わったの? そして、鉄砲が現れた今、越前国で城を築くのに、最もいい場所はどこ?」だと分かるのですが、逐語訳は難しいです。

・「異国は知らず、本朝に於ひては、要害のため」

三省堂『大辞林』(第三版)に

 ──ようがい【要害】 攻防上で重要な地点。要衝。

とあります。「要害」を「城」「砦」と訳す場合もありますが、ここでは後に「城」が出てきますので、「城」とは訳さない方がいいでしょう。「要塞」は近代っぽいので、「外国の事は知らないが、日本においては、軍事拠点とするため」と訳してみました。

・「昔は山を片取り、城を築きける也」

三省堂『大辞林』(第三版)に

 ──かたどる【方取る】 ある物に近づけて置く。 「山ヲ-・ツテ陣ヲ取ル/ヘボン 三版」

とありますが、「山に近づけて城を築く」では意味不明ですので、「山の付近に」ではなく「山の中に」と解して、「昔は(平野部ではなく)山間部に城を築いた」と訳してみました。

・「近代は、鉄炮出で来ぬれば、古への境地は用ひるに足らずと覚ゆ」
三省堂『大辞林』(第三版)に

 ──きょうち【境地】 場所。土地。環境。〈日葡〉

 ──たらず【足らず】  名詞に付いて、十分でないことを表す。

 ──覚える【覚える】 (古風な言い方)思われる。

とありますから、「最近は鉄砲が出て来たので、昔の場所(山間部)を使うのは不十分だと思われる」と訳してみました。


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