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第50話 コロナ前半戦、終了

2020年6月7日

 2020年6月7日、台湾では8週間連続国内感染者ゼロを記録した。コロナの潜伏期2週間×4回を乗り越えたことになる。もうコロナは台湾国内にはいない。この日をもって、国内規制は全面解禁となり、国民にとっては事実上のコロナ対策終了宣言だった。(防疫新生活の守るべき二項目は日常のデフォルトという位置づけ。国境開放はまだ先。第48話参照

 6月7日に至るまでの数日間、政府はコロナ対策の総まとめと今後の計画についていくつかの切り口から説明し、「走りながら考えて実行してきたので、粗い政策もあった。それらを今余裕のあるうちに見直し、改善を図っている。」と話した。

 台湾のコロナ対策を評価すると、未知のウイルスに対する知見が少なかった状況下で取った対策としては正しいものだったと思う。そして結果もついてきた。しかし、新たな知見が得られてきたにもかかわらず、同じ危機に際して全く同じ対策を講じるというのは愚かだ。どんな対策も後から振り返れば常に改善の余地はある。政府が己の好成績に溺れるのではなく、ちゃんと振り返りの作業を始めていることに私は安堵した。

 毎日行われていた中央感染症指揮センター(新型コロナ対策本部)の定例記者会見は、累計164回開催された。これからは週1回へと切り替わる。国民の関心の低下とともに視聴率は下がっている。国民は日常的に手を洗い、必要な場面でマスクをつけ、コロナのことを忘れないように時々呼びかけられるのだろう。

 コロナ後半戦の幕開けは、国境を完全に開放した後になるかもしれない。ただ、ドラマチックな展開はあまりない気がする。出来上がったシステムを運用して、粛々と防疫を続けるだけだ。世界の感染状況がおさまり、ワクチンが完成するその日まで。

 当初予期していなかった副産物ではあるが、私は、台湾社会がこの数ヵ月で一段階レベルアップしたように感じている。政府と国民が、最初は不信感や困惑もあったが、最終的には共通目標をもって団結できたのが本当に素晴らしかった。(ただし、残念ながら台湾マスコミはマスゴミだったので、称賛の対象からは完全除外しておきたい。)

 これで台湾政府が完璧だと思うわけではない。人間がやることだ。不十分な政策は今後もあるだろうし、国民が選挙という手段で政権を監督する民主政治の基本構造は続く。ただ今後は、以前よりは信頼を持って政府を監督できる気がする。コロナ対策を通して、政府の中で働いている人の多くが善意の持ち主であると認識する良い機会になった。立場の違いはあれど、誰もが血の通った人間であり、負の感情よりは愛や信頼で影響し合う方が幸せだ。

 台湾の民主政治の歴史は浅く、まだまだ危うい。今はコロナ対策の成功に皆が感動に浸っているが、何かあればあっという間にこの信頼がひっくり返ることは容易に想像できる。しかし、ひとつずつ課題を乗り越えることで、より強固なものになっていくことを願ってやまない。なによりも、我々国民ひとりひとりがこの国の形を造って行くのだという意識が定着したらいいなと思う。

(参考)台湾でのコロナ感染者数累計443人。死亡7人。(6月7日時点)

0607までのグラフ

(追記)第1話から第50話まで、時系列で台湾の動きを紹介してきた。これにて時系列の話題は終了し、今後はテーマ別に台湾のコロナ対策をまとめる予定。


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