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第38話 唯一の休業命令

2020年4月9日

 台湾では都市ロックダウンは回避され、各種行動制限もかなり限定的だった。しかし、唯一休業を命令された業種がある。日本でいうところの「接待飲食等営業店」だ。平たく言えば、キャバクラのようなお店。わかりやすさを追求するために、本稿ではキャバクラを接待飲食等営業店の代名詞として使う。

 2020年4月8日、感染源不明の国内感染例が判明した。

30代女性。渡航歴なし。国内の旅行歴もなし。4月4日に発熱、鼻水が出現し、検査をうけた。当初は、無職で基本的には自宅にいることが多いと自己申告していた。夫は1月に広東省から帰国。同居家族が2月9日に東南アジアから帰国。本人からの聞き取り調査が困難のため(政府はこの理由を明らかにしなかったが、後日、キャバクラ店勤務だったことをマスコミが暴露した)、監視ビデオなどで情報収集中。感染源不明。

 当初、本人は隠蔽していたが、調査の結果、キャバクラ店で働いていたことが判明。彼女の個人的な事情については想像の域を出ないような報道しかなかったが、マスコミ報道によると、夫や家族にもキャバクラ店勤務については秘密にしていたらしい。

 この事例発生を受け、4月9日、キャバクラ店に対し全国一斉に休業命令が出された。休業中の補償あり。違反したら厳しい罰則あり。警察が取り締まり、営業していないことを確認した。違反したというニュースは流れてこなかったので、おそらくみんな命令に従ったのだろう。法的拘束と社会的圧力の二本立ての効果かな?

 本事案に対するクラスター調査では、3月23日から4月3日までの勤務期間の客と同僚を追跡。接触者は合計123人(内、家族4名、職場96名、その他23名)。在宅隔離が必要となったのは65人。内、20人に検査実施、全員陰性。感染拡大なく、孤発例となった。

 全国のキャバクラ店にしてみれば、とんだとばっちりだろうなと思ったが、その後日本で発表されたクラスター報告を見ると、台湾の決定はあながち間違っていなかったのかもしれないとも思った。なかなか評価が難しいところだが。

 5月初旬、政府は「防疫新生活」を合言葉に、事業者向けのガイドラインを発表した。各地のキャバクラ店はガイドラインに沿った各種感染予防対策を講じた上で、順次再開したらしい。


(参考)欧米での感染拡大に伴い、3月中旬から海外流入例が増えていたが、国内感染例は限定的であり、感染源が明らかな例がほとんどだった。

0409までのグラフ

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