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あの日のEテレ

とある仕事の関係もあって、自著の一節を書き出し。

 そうやって、これまでの人生では考えられないような毎日が過ぎていく中で、息子と一緒にぼんやりテレビを見ていることが増えた。いや、正確に言うとテレビというより「Eテレ」だ。
 大好きな国本武春さんが子ども向けの番組に出ていらっしゃることに驚き、仲條正義さんのカルタイラストにしびれ、浜野謙太さんの「ムジカ・ピッコリーノ」や、井上涼さんの「びじゅチューン!」、ときに横山剣さんの楽曲まで聞くことのできた「みいつけた!」など、どちらかというと私のほうが息子より釘付けになっていた。その時考えていたことは、 「Eテレは子どもをバカにしていない」
ということだった。
 子ども相手に、手抜きのない本質を見せてくれる。大切な我が子を大切に扱ってくれる番組は、私からしてもとても大切な番組だった。 
 さて、私はどうだろう?

 人をバカにしない本づくりとは何だろう。 
 人を信じる本づくりとは何だろう。 
 私は何を作っているんだろうと手を止めた3・11の後の私は、これから、この子を抱えて何を作るんだろう。この子に見せる背中は、彼に何を伝えるんだろう。
 この子をバカにせず、自分をバカにせず、人をバカにせず、人が持つ本を読み解く力を信じて作る本とは、一体どんな本なんだろう。
 本を、本の未来を、そして自分自身をないがしろにしない。 
 この子のこれからの笑顔を守るために、まず自分から始めるとしたら、何ができるんだろう。

 そんなことをずっと考えながら、息子をゆらゆら、抱っこしていた。首がすわって縦に抱っこができるようになると、顔が近づいて、いつも額やほっぺにキスをした。
 私もみんなも、あなたのことを愛しているということを、ずっとずっと、伝える。あなたは大切。大切な大切な人、と何度も伝える。本も、それだろうか。

(『しずけさとユーモアを』エイ出版社刊 P88「人をバカにしない本づくり」より抜粋) 

あなたは大切。
大切な大切な人。

センジュ出版の本が、読む人にそれを伝えられるのなら。
そんな本をこの先もずっと、誰かのために作っていけるのなら。
わたしはそれで満足なのだと思う。


そのことに気付かせてくれたのは、あの日のEテレ。
子どもを、人をバカにしないでいてくれたこと。
本当にありがとうございます。


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