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読書の準備体操

土曜日はオンライン読書てらこやだった。
先月からは、奇数月にこれまで通り、課題本2冊を受講者と共に読み合う「読む読書」を、そして偶数月に新たな試みとして「聞く読書」と題し、主催である読書のすすめ小川さんとわたしとがひとつのテーマをお互いに解釈して話をし、その二つの話を読むように聞いてもらった後、受講者が各々感じたことを話す読書会を、それぞれ開催することにした。

今月のテーマは「ほぐす読書」。
小川さんにはいつも、テーマについて詳しくその意図や理由を伝えていない。
もっと言うと、テーマを決める瞬間、わたしはなぜそのテーマを選ぶのか、よくわかっていない。
なんとなく思いついた、ひらめいた、気づいた言葉を手がかりに、テーマを決めている。
今回も、決めてから1ヶ月の間、どういった視点から話をするか考えてみた。
開催日の1週間ほど前から少しずつプレゼン資料を作り始め、朝方そのプレゼンの内容からのおすすめ本を読み終え、当日に。

「ほぐす」を、読む前の準備としたらどうだろう。そう考えたわたしの一つの答えは「柔軟」だ。

出版社を経営する自分が言うことではない気がするけれど、読書に偏りすぎると人は頭でっかちになる。
たくさん本を読むこと自体は何も問題ない。
要は、なんのために読むのか、という問いだ。

読む目的は人の数だけあっていいので、むしろあなたが本を読む目的を、今度聞かせてください。
でも、もしその目的を叶えるため、本を読む前に必要な準備をしたとしたら、どうだろう。
しなかった時に比べてひょっとしたら、少し違った読書になりはしないだろうか。

息子が生まれる前、わたしは思い立って早朝ジョギングを始めたことがある。
道具は揃えたものの深い知識もなく、自宅のそばの土手を15分、30分と距離を伸ばしながら走って、そのあと一度帰宅してから出社する。
そんな習慣をほぼ毎日続けてすぐ、わたしは足首を痛めた。
社内のランナー先輩にその話をすると、
「走る前にちゃんと時間かけて柔軟した? こんなに寒い季節、急に走ったら体を痛めるだけだよ。あと、毎日走るのも良くない。走ったら休む、そしてまた走る。休んでる間に必要な筋肉が育つんだから」
と言われたことを、ふと思い出す。

読書も、同じじゃないだろうか。
あれを学びたい、これを知りたい。その気持ち自体はとても豊かなこと。
でも、準備を怠ったりタイミングを見誤ったりした読書は、なかなか身に付きにくい。腑に落ちづらい。
足腰が弱く、比重が偏った頭から、転んでしまう。
結果、行動が止まってしまう。これこそ本末転倒だ。

本から学んで、本を知って、本を生かすために、まず、あなたが本当は何を望んでいるのか知るための、準備をしよう。
深く呼吸しよう。ストレッチしよう。目を閉じて内省してみよう。
そうした時間を経てからの読書はひょっとすると、あなたをより長い距離を走れるようにしてくれるかもしれない。

参加者の方からは「読書会でストレッチしたり瞑想したりしたのは初めての経験です」とのお声をいただいた。
ですよね、わたしもこんな読書会、初めて企画してみました。

本を読んだあと、どこまでも行けるような、どこまでも走れるような錯覚を覚える日もある。
一方で、どこにも行けない、全然走り出せない、そんな日があるのも確か。
一日一日柔軟して筋トレして、
明日は今日より少しだけ、遠くまで行ける自分になれるように。
目の前の一つひとつのことを、本を読む時のように想像をはたらかせること。
自分にとって、遠くまで行く近道は、これだけだ。

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#今日の (何日か前の)一冊
#走ることについて語るときに僕の語ること
#村上春樹
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