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マッチングアプリで出会った人と3ヶ月で事実婚するまで#4 〜付き合った日〜

それからまた1週間が経った。
わたしは占いに行った(誕生日を聞いていなかったので、推測で言ったら1日間違えた)。母にも会ったし、昔めちゃくちゃ好きだったけど今は友達になった人にも会って彼の話をした。付き合うと思うと。

彼のことは好きだと思う。だけど、9年前に唯一の元彼と付き合い出したとき(昔すぎる)に感じたみたいなドキドキはない。それでいいと思っていた。
一緒にいて話が尽きなくて、同じ方向を向いて生きていけそうだと思ったらそれ以上のことなんて必要ないと思ったから。昔は恋愛に多くを求めていたけど、もうアラサーだし大人になったな。


前回歩きながら話したときに、ビフォア・サンライズのことを教えたので、参考までにURLを送ったときに来週からリバイバル上映することに気づいた。「リバイバル上映するらしい!」と一緒に詳細を送っておいた。
「え!行きたい!」と返事があったので、次のデートの2日後に映画館のチケットを取った。
次のデートで付き合ったとしたら、これが恋人として初めてのデートになるんだな…と唾をゴクリと飲み込んだ(気持ちで)。


美術館の予約が14時だったので、12時に待ち合わせして昼食を食べてから向かうことになった。
「肉が食べたい!」という彼のリクエストで、とんかつを探しておいた。

早めに起きたので、30分前くらいに行けそうだと連絡を入れておいた(いつもながら待ち合わせが早すぎる)。「僕も11時半くらいに着くように行くね」と連絡があった。
乗り換えがうまくいって11:15に到着したわたし。六本木には明るくないので、それっぽい出口のところで待ってた。

とんかつは並んでいた。行列はもはや我々にはノーダメ。
並んでいる間に、前日に受けた占いで彼の話をしたとは言わず転職の話だけした。今読んでいる本の話も、出張先の山形で食べたとんかつに味が似ている話も。

美術館の予約の時間には少し早いけど、入場できるかと思ったら止められてしまった。入り口のすぐ横で君たちはどう生きるかの話をした。
アートは本性が現れるかと思ったら、作品の性質のせいかそんなことはなかった。発しているメッセージや時代へのアンチテーゼを読み取るのに必死になって、2人でこれはどういう意味があるのかあれこれ考えては共有していた。
彼の印象は変わらないままだったけど、出口にフォトスポットがあったのでお互いの写真を撮りながら「こんなふうにお互いの写真を撮ることが日常になるのかな」と考えていた。彼の写り方が外国人観光客みたいで2人で笑った。


戦犯はわたしじゃないと信じたい



美術館を後にして、六本木の周りをぶらぶらと散歩した。
途中で輸入のものを多く扱うスーパーに立ち寄って、彼が年末のアメリカで過ごしたときの話やわたしの好きなお酒の話をした。わたしはグルテンフリーのパスタを買って、カバンが小さくて入らなかったので彼に預けた(この後バッチリ忘れて彼が持ち帰った)。

彼の母校が近くにあるというから、そこまで歩いていくことになった。
初めてのデートはわたしの住む街。2回目は彼が育ってわたしが働いていた街。3回目は彼の母校なんて、わたしたちはいつも身近な場所を巡っている。
高校に着くまで、彼は学生時代の話を聞かせてくれた。わたしには高校時代の思い出はないけど、特に嫌だとは感じなかった。


高校は日曜なのもあって人気はなく、わたしたちは学校の隣にある小さな公園のベンチに腰を下ろした。やっぱり沈黙。
「3回目のデートはどうだった?」彼が聞いた。
「楽しかった。アートで本性は出なかったけどね。」

「僕はこなさんと付き合いたいと思ったけど、こなさんはどう?」
わたしも気持ちは変わらなかった。だけど、前回のデートで言っておかなかったことが1つだけあった。
「その返事をする前に、1つだけ聞いてほしい。わたしは正社員として転職を目指しているけど、もし今回の転職がうまくいかなかったら正社員を諦めようと思ってる。この先もし結婚するとなっても、わたしは経済的な力にはなれないかもしれない。それでよければ、わたしはあなたと付き合いたい。」
これに対して、彼は結構即答だった。
「この先なんてわからないし、そのときが来たら考えればいいんじゃない?」
「じゃあ、付き合いますか?」と彼は言った。
わたしは大きく頷いて「よろしくお願いします。」と言った。

こうしてわたしたちは恋人同士になった。
まあ、なったからってすぐに実感が湧くものじゃないけど。

ベンチから立ち上がって、「手繋ぐ?」と彼から提案。
彼氏になって即手繋ぎなんて、心の準備ができていなかった。けど、恋人なんだから当たり前かと思って手を繋いだ。
わたしは初めて男の人と手を繋いだとき、全身が固まって会話もできなかった。
それから10年以上も時が流れて、手を繋ぎながら歩いたり話したりできるわたしはいい経験も嫌な経験もたくさんしたんだなと感じた。

手を繋ぎながら東京タワーまで歩いた。
その頃には辺りは暗くなっていて、東京タワーのオレンジ色の灯りが幻想的だった。


有楽町まで電車で移動して、夕食を食べることになった。
歩きながら飲食店を探していたら待たずに入れそうなもんじゃ屋さんがあったので、そこに決めた。
彼はもんじゃを作るのが得意らしく、全部お任せした。隣のテーブルはわたしたちよりも若い女性が2人と男性が1人の変わった組み合わせで、1人の女性が今日地方から来たばかりの初対面みたいな口ぶりだったので面白くて彼にこそっと耳打ちした。
話す内容も態度も何も変わっていなくて、「この人、わたしの彼氏なんだよなあ」と不思議な感覚だった。5年近くちゃんとした彼氏がいなかったので、変になるのも仕方ないか。


食事の後は日比谷公園まで散歩した。
寒空の下、ベンチに座って小一時間は話していた。
お互いの兄にコンプレックスを抱いていたこと。自己肯定感が低くて悩んでいたこと。会話の内容はより深くてプライベートになった。

去り際に「キスしていい?」と言われたけど断った。
まだ全然キスとかできるマインドじゃなかった。これからできるようになるだろうなとは思ったけど。それに、キスするようになってしまったらまだしていなかった頃の初々しさは戻ってこないから、もっと丁寧に進めたかった。「映画観てからにしようか」なんて次のデート以降にはぐらかした。
まあ、次はハグだな、と考えていた。


解散後に彼から「これからも末長くよろしくお願いします」とLINEが入っていた。「こちらこそ、どうぞよろしくお願いします🙇‍♀️」と返した。
これからどんなことが起きるんだろう。少なくとも一緒にいるだけで楽しいのだから、この選択をしたことは間違いではないだろうと思った。

前にお試しで付き合ってみた人とは、こんな感情にはならなかった。だから今回は長くなるだろう。自分の周りの断ち切りたかった関係も、恋人がいるとなれば容易に切れるに違いないとそのときは思った。

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