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マッチングアプリで出会った人と3ヶ月で事実婚するまで#3 〜2回目のデート〜

2回目のデートはちょうど1週間後、彼の実家近くの駅で遊ぶことになった。
わたしも約2年半働いた街で、お気に入りのお店や場所がある。

前日に前の職場の飲み会があって、3次会で先輩に捕まって3時間しか寝られなかった。デート中に黙り込んだりうとうとしたりしないだろうかと少し緊張していた(結果として終始テンション高めだった)。
飲み会では気になる人がいる、明日デートすると言いふらすくらいにはトシくんとの2回目のデートを楽しみにしていた。


朝起きて化粧をしていたら、地震があった。
少し大きかったけれど何かが壊れたりはしない程度のものだった。わたしは「今日開口一番に彼に心配しよう」と思った。

前回早く来た彼を鑑み、久しぶりに降りる駅で自信もなかったので待ち合わせの12分前には着いた。
彼はもういた(早すぎ)。
癖で昔使っていた出口から出ようとしてしまったのと、彼が早すぎた驚きとで地震の心配がすっかり抜け落ちてしまった。
「地震大丈夫だった?」駅の階段を降りながらそう声をかけたのはわたしではなく彼だった。わたしよりも先に気遣いができる人だな、と感じた。


昼食に選んだのは、わたしが年に1回は行きたくて中毒症状が出るくらい好きなラーメン屋さんだった。オープンの10分前に並ぶつもりが、2人とも早かったので20分前にお店の前に並んだ。
普段なら、並ぶほどの人気店に行くときは人を選ぶ。並ぶのが苦手な人や、話していて間がもたない人は誘わない。
けれど、彼なら大丈夫だと思った。
「もし1回転目入れなくて並んでも、トシくんとならたぶん楽しくおしゃべりできると思うからさ✌️」というわたしのLINEに
「そう言ってくれるの、めちゃくちゃ嬉しい…!」と返ってきたので、よっしゃ高ポイントゲット!と心の中でガッツポーズした。

並ぶ時間はあっという間だった。この街の話、この後どうしたいか、彼の友達の話、いつもながら本当に尽きない。
わたしがつけ担々麺と餃子が大好きなので、2人で同じものを頼んだ。彼が本当においしそうに食べるのでわたしも嬉しかった。
彼は餃子には酢コショウ派で、わたしは宮崎出身の元同僚にこの店で酢コショウを教えてもらった話をした。他に食べている人を知らなかったので、東京出身なのに珍しいねと。


昼食の後、お腹休めにわたしの元職場の近くをフラフラ歩いた後はカラオケに行った。
彼は高校時代にフォークギター部に入っていて、歌うのが好きだと聞いたから。
わたしも短い間だったけれどその頃オペラを習っていた。筋トレといい、趣味は結構合う。

彼は椎名林檎と東京事変が好きだと聞いたので、覚えたてのキラーチューンを1曲目に入れた。一緒に歌ってくれて嬉しかった。
何曲か歌った頃、彼に「A Whole New World歌える?」と聞かれたのでうんと答えた。初のデュエット。正直キスよりドキドキした。深みにハマった瞬間があるとしたらたぶんここだ。
めいめいに好きな曲を歌うより、2人とも知っている曲を歌うと楽しいと気づいてからは2時間が秒で過ぎた。
最後にRADWIMPSのいいんですか?を歌って、フラレガイガールまで知っていると聞いて嬉しくなったけれど時間が足りなくて店を出た。

ラーメンをご馳走してもらったお礼にとカラオケ代は彼が出してくれた。エレベーターの中でしまおうとしていたその財布に目が行った。綺麗で、わたしの好きな色だったから。
「そのお財布かわいい!わたしその色大好き」わたしが言ったら彼は喜んでくれた。「ありがとう。これ神戸の職人さんが作ってるやつなんだよね。」
わたしも名の知れたブランドより職人の丁寧な仕事が好きなので、この人つくづくわたしの好みなポイント突いてくるなあと思った。
およそ100日後の事実婚のお祝いで色違いの財布をプレゼントされるなんて、このときは全く考えもしていないのでした(当たり前)。


その後は街を散策。
結婚についてどう思うかの話になったとき、「したいと思う人が現れたらしたい」と彼は言った。わたしも同じ意見で、「1人でも生きていけると思うから、必ずとは思っていない」と答えた。
このときはまだお互いよくみられようとして回答を考えていたと思う。

商店街でモンブランに並んでいたとき、今まで行った国、これから行きたい国の話になった。わたしは4年半前に行ったカンボジアの現状と、再訪するならトゥールスレンに行きたいと言った。こんな会話ができるなんて、賢い人はありがたいなあなんて思った。

メンチカツを食べる場所に迷って、わたしが仕事の昼休みに毎日オンライン英会話をしていた公園を提案した。
いつもほとんど無人だった公園は、休日だけあって人が絶えず、わたしたちが来たときには野球をしている親子がいた。

他に遊びそうな子どもがいなかったので、わたしたちはブランコに腰を下ろした。
初めての沈黙が流れた。
「2回デートしてみてどうだった?」と彼が聞く。「一緒に過ごしてて楽しいと思ったよ」とわたしが答える。
「他の人ともデートしてるの?」と聞かれたので、「してるよ」と正直に言ってしまったけど、ここは嘘でも彼を安心させた方がよかったかもと考えて焦った。「わたし何か間違えた?」とついつい聞いてしまったくらい。

公園に遊びに来た親子がいたので、場所を移ることにした。
近くのお寺のベンチに再び座った。
「2回目で答えを出すのって難しいよね」と言われて、この人は慎重派なのかと思ったから「わたしは今日付き合おうって言われてたら付き合ってたよ」と言った。後から聞いたらこれでその日の告白チャンスを潰していたらしい。申し訳ない。

それからわたしたちは歩きながら話をした。お互いの病気のこと、家族のこと、育ってきた環境のこと、恋人にされたら嫌なこと、結婚に対する考え方、子どもが欲しいか。聞きたいことは全部聞いたし、言っておきたいことは全部言った。
結局2駅以上先までぐるぐると歩いて、2時間くらい経っていて、なんだかわたしの大好きな映画ビフォア・サンライズみたいだと考えていた。
一緒にいたらいつかすれ違うかもしれないけれど、この人なら話し合って解決できそうだと思った。
結婚は向かい合うより同じ方向を向くことだというけれど、彼とは同じ方向を向いていけるような気がした。


「次は本性が見えるデートをしよう」わたしがそう提案して、いろいろと考えた結果六本木にアートを見に行くことになった。アートを鑑賞しているときにその人の性格がわかると思ったから。
その場で予約を入れてその日は別れた。次はまた1週間後。

次に会ったときに付き合うことになるのだろうな、と半ば確信があるくらいの時間を過ごした。


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