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小澤メモ|POPCORN MOVIE|映画のこと。

2 鼻づまりとステーキ。

マスクどころかプラグがあったりスコープつけたり?
先進国のトップランカー、世界の警察と自認するアメリカが大変なことになっている。コロナ禍から都市封鎖。それなのにミネソタで白人警官が丸腰の市民を死なせてしまったことに端を発し、各都市で暴動やデモが起きている。マスクや外出制限とか吹っ飛んでしまった。詳細を知らないのにのたまう気はさらさらない。ただ、世界トップの先進国ぽいのに、こういった出来事や差別的なことが繰り返され、そして防疫と反比例する現状に、それって国家体制としてどうなんでしょう?と思ってフリーズすることが多い。アメリカン・カルチャーは大好きだし、誠実に生きているアメリカ人の友だちも多いので、心配は尽きない。それでなくても、アメリカの映画『マトリックス』や『12モンキーズ』のような世界があながちフィクションではなくなるような気配がしないでもない。

マトリックスよりストレンジデイズか?
頭の後ろにプラグを差し込まれ培養カプセルに入ったまま仮想ライフを送る『マトリックス』の世界観。いや、それよりも、バーチャル・リアリティの中毒性を考えると、『ハート・ロッカー』でアカデミー賞をとったキャスリン・ビグロー監督作品『ストレンジ・デイズ』の世界観の方が近いかもしれない。どちらにせよ、動かず(動けず)にジッとして、コンピューターさんに体感した気にさせてもらうシステムだ。で、映画の話。今回はポップコーンではなくて、フォークとナイフで肉を食べる。『マトリックス』とベルギー映画『闇を生きる男』。一方は先進的で最先端?なアメリカのSFもので、もう一方は実際にあった欧州の畜産ホルモン犯罪事件を絡めたせつないある男の物語。個人的に、ステーキを食べるとき、いつもこの2作品のあるシーンを思い出している。

テーブルで向かい合って肉を食べる男たち。
『マトリックス』では、プラグ生活に戻りたい裏切り者のジョー・パントリアーノ演じるサイファーがA.I(マトリックス)のエージェント・スミスと取引するシーン。(仮想の)高級レストランのアンダーなライトの下で向かい合ったサイファーは、ステーキを頬張る。そして、口の中でその食感と味を堪能しながら、なぜかその肉の風味が鼻腔の奥までしみわたったような鼻づまりな声で、悪事を囁くのだった。『闇を生きる男』では、きな臭い商談を持ちかけられた主人公ジャッキー(マスティアス・スーナールツ)が、黙々とステーキを食べるシーン。ジャッキーと向かい合った畜産マフィアが、やはりサイファーと同じく鼻づまりのような雰囲気でもぐもぐと肉を咀嚼する。どちらもハッピーなディナーではない。しかし、妙にセクシー(ゾワゾワとする)なのだった。個人的には、寺門ジモンさんたちが絶賛しながら肉を頬張っているより、肉を食べるという光景をリコメンドされている気がしてくる。心のどこかで、肉を堪能して美味しいと感じることに後ろめたさがありながら、それでも食べている自分を、ゾワゾワとした映画のように見ているのかもしれなかった。そんな気分でステーキを食べる。かなしいかな、美味しいのだ。2
(写真は畜産業が盛んなフランスのマルシェ/2019)


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