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(米国株式市場5月3日〜7日)今週の合戦の振り返り!セクターローテーションは続きハイテク銘柄の受難は続く。ナスダックとS&P500指数ともに売り抜け日が溜まり要警戒。

今週の合戦(米国株式市場)の振り返りをします。

(先週)(米国株式市場4月26日〜30日)今週の合戦の振り返り!株価3指数は横ばい、エネルギー・金融・通信サービスが株式市場を牽引。来週も怒涛の決算ウィークが続く。

1. 今週の合戦の要約


・ダウ平均とS&P500指数は最高値を更新するもナスダックは停滞
・累積売り抜け日もS&P500は4、NASDAQは4と蓄積。警戒感高まる状況。
・ナスダックとラッセル2000は50日移動平均線との攻防が続く。
・セクターはエネルギー、金融が牽引。
・金利は落ち着いて推移するもハイテク株受難相場は継続。
・イエレンの金利言及で火曜日にハイテクがクラッシュも雇用統計でリバウンド。
・雇用統計は市場予想を大幅に下回りドル安が進み金が回復
・雇用統計の悪化は魅力的な失業保険等により供給側の原因が指摘されている
・米国決算は今週がピークで来週からは少なくなってくる。


2. 代表指数動向(&強気相場 or 弱気相場判定)

□ 4/30 close to 5/7 close

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・ピンク:NYダウ
・ブルー:S&P500
・グリーン:ナスダック

↓↓↓

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ハイテク中心のナスダックが売り込まれ、反対にダウ平均やS&P500指数は最高値を更新しています。特にオールドエコノミーが多く組み込まれているダウ平均は引き続き強い経済再開期待から力強く推移しました。

以下は年初来のさん指数の動きですが、ダウ平均はS&P500指数を上回り3つの中で最も堅調な指数となっています。一方ナスダックは直近足踏みをしている感が否めません。

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□ 現在は強気相場?弱気相場?

S&P500/NASDAQが売り抜け累積日数4で弱気相場の始まりへ警戒状態となりました。

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(※売り抜け日カウント数とは?)
前日比で0.2%以上のマイナスを前日以上の出来高ともなって記録した日を「売り抜け日」とカウント。4-5週間で4-5日あれば天井から下落の可能性あり。「フォロースルー日」を迎えたらカウントはリセット。「フォロースルー日」は下落局面で前日比プラスで引けた日から4-7営業日後に出来高を伴って大幅に上昇した日のことを指す。

火曜日の大幅な下落を受けて一旦オニールの発行するInvestors Business Dailyでも「明確な上昇トレンド」から「下方圧力のかかった上昇トレンド」に変更されましたが、金曜日の上昇を受けて再び「明確な上昇トレンド」に格上げされました。

とはいえ、既に売り抜け日カウントは4日溜まっています。

以下はナスダックの年初来の値動きです。ナスダックは50日移動平均線(赤)との攻防が続いており、50日移動平均線自体も上昇トレンドから横ばいに推移しつつあります。引き続き注視してマーケットを観察した方がよいのは間違いないでしょう。

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3.セクター別(4/30 close to 5/7 close)

□ S&P500 Highlight

(1week)

・Amazon(AMZN)△5.07% 
・Tesla(TSLA)△5.22% 
・Exxon Mobile(XOM)+9.07%
・ConocoPhillips(COP)+11.65%
・Merk(MRK)+5.25%
・JP Morgan(JPM)+4.83%

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わかりやすくハイテクセクターが弱いですね。特にハイテクの右側にあるSOFTWARE APPLIは真っ赤っかです。

□ 業種別 Highlight

(1week)

・Energy(エネルギー)+3.97%
・Materials(素材)+3.77%
・Financials(金融)+2.65%

・Information Technology(情報技術)△2.68%

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ハイテクからオールドエコノミーの流れは引き続け継続しています。

□ セクターETF騰落率 Highlight

(1week)

金鉱株ETFであるGDXや、エネルギーETFであるXLEが堅調。

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茶菓子TIME:指数では見えないハイテク株の受難がマーケット先行きを暗示?

指数を観察していると、ナスダックやラッセル2000は停滞気味ではあるものの最高値付近にはあり、ダウやSP500は最高値を毎週更新と素晴らしく堅調な相場のようにみえます。

しかし、個人投資家が投資をしているハイテクグロース株は2月から受難の時を迎えています。以下はARKKを含めて昨年個人投資家に好まれた銘柄のパフォーマンスです。

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年初来ZMやFSLYのように50%近く落ちている銘柄も存在しています。2月からというのが見れませんが、最高値からの下落幅でいると上記とりも衝撃的な下落幅となります。

昨年大規模な金融緩和で正当化されてきた高すぎるバリュエーションに修正が入っています。好決算でEPSが上昇する傍ら、株価が下落しバリュエーションが下落しています。

これらの銘柄は昨年マーケットを主導してきた先導株です。時価総額が中型から大型の間の銘柄が多いため指数には現れにくいですが、先導株は文字通り上昇するのも下落するのも指数に先行します。

オニールの「成長株発掘法」やミネルビ二の「成長株投資法」では先導株が下落したら指数の見通しが悪くなる可能性があることに触れられています。今後の指数の下落を暗示している可能性もある点は懸念されます。

一方、本当に魅力的な成長株は指数が下落途中に上昇しだすので、逆にいうと指数が下落していく局面で苦境を抜け出す銘柄を必死で探すのが大化け株を見つける良い機会となります。

4. FRB動向


(FRBの金利動向に気をつける)
→過去を振り返ると、FRBの金利が引き上げられたことがきっかけで弱気相場が始まり不景気に突入した歴史がある。弱気相場が終わるのは金利が下げられた時が多い。最も簡単で役に立つ金融指標はFederal Fund(FF)レート。コンピューターによる自動売買や様々なヘッジサービスによってリスクの高い弱気相場で発生する株価の下落から資金を守るために、ポートフォリオの大部分をヘッジするファンドが現れた。金利が急騰する場面は相場が下落しやすい仕組みになっています。(但し、金利よりも株価が相場を見極める指標としては最重要です)


□ 今週のHighlight


・火曜日元FRB議長で現財相のイエレンが金利上昇の可能性に言及
・雇用統計は雇用社数・失業者数ともに予想を大きく下回る結果に


□ ドットチャートの動き

3月時点でのドットチャートは以下の通りです。現状は2021年での利上げは見込んでいません。次回は6月です。

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□ 米雇用統計

今週は金曜日に雇用統計が発表されました。(雇用統計は毎月第一金曜日に発表されます。)

雇用者数:26.6万人 (予想:97.8万人)
失業率:6.1% (予想5.8%)

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雇用者数は97万人の増加が期待されていただけに26.6万人増というのは衝撃的な内容でした。

FRB議長のパウエルは4月8日のIMFセミナーで100万人近い労働者の増加が3ヶ月続くことが米経済の著しい改善の確認の方法という認識を示しており、彼の期待から大きくずれる結果となってしまいました。

米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は8日、3月の米雇用統計で就業者数が力強く拡大したことを評価する一方、支援策の縮小にかじを切るには、米経済の著しい改善を確認する必要があるとの認識を示した。

パウエル氏は、国際通貨基金(IMF)主催の世界経済に関するセミナーで「進展が加速するとどうなるかが3月の雇用統計で分かった。100万人近い就業者の増加だ」とした上で、「これが数カ月続けば、われわれは目標に向かって進んでいると言うことができる」と述べた。

Wall Street Journal

しかし、4月の期待はずれの結果となったことに関しては、次項の要人発言にも指摘されている通り、選択的失業を雇用者が行なっている可能性があります。

□ 要人発言

今週最もマーケットを動かした発言は元FRB議長で現財務長官のイエレンによる金利に対する言及です。

イエレン長官は3日収録されたアトランティック誌とのインタビューで、「米経済が過熱しないよう確実を期するには、金利はやや上昇せざるを得ないかもしれない」と発言。「金利の極めて小幅な上昇につながる可能性がある」と付け加えた。インタビューは4日にウェブサイトで公開された。

(参照)Bloomberg 「イエレン米財務長官の発言に市場同様-金利上昇の可能性に言及」


ただ、記事にも記載の通り当然イエレンはFRBの独立性については理解していると述べています。市場関係者としては、発言の意図は政策金利に関する言及ではなく、市場の長期金利に関する言及であったとする分析がなされています。

また、金曜日の雇用統計を受けてリッチモンド連銀総裁のバーキンは以下のように労働の供給側の問題と述べています。


米リッチモンド地区連銀のバーキン総裁は7日、朝方発表された4月の米雇用統計が「期待外れ」の内容と述べた。同時に、回復の弱含みではなく、雇用のボトルネックを示唆しているとの認識を示した。

米労働省が発表した4月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比26万6000人増と、市場予想の97万8000人増を大幅に下回る伸びとなった。労働力不足が要因となった可能性がある。

バーキン総裁は、自身が「総体的」指標として注目する人口に占める雇用者の比率は57.9%と、昨年12月の57.4%から小幅な伸びにとどまっており、新型コロナウイルス危機前の61.1%をなお下回っていると指摘。雇用面での「一段の大幅な進展を期待しており、4月の統計がより力強い内容になると想定していた」と述べた。

米経済が年末までにトレンド成長に回復する公算が大きいとしつつも、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)中に積み上がった家計の貯蓄が「余裕」となり、職場復帰の足かせとなっている可能性があるほか、新型コロナへの懸念や保育サービスの不足、失業保険手当て上乗せなども影響していると指摘。雇用の「問題はもはやデマンドサイド(需要側)ではなく、サプライサイド(供給側)だ」との認識を示した。

(参照)
米雇用統計は期待外れ、雇用のボトルネック示唆=リッチモンド連銀総裁

要は企業側からの雇用の需要はあったとしても労働者側の、

・パンデミック中の給付金や失業給付による貯蓄の積み上がり
・単純にコロナが怖い
・依然として失業給付が手厚すぎて労働意欲がわかない

という理由によって就職しないという選択的失業が増えている可能性について言及しています。

失業給付は通常に加えて週間300ドルの上乗せが9月まで継続することになっています。カリフォルニア州などでは失業給付だけで月間30万円を超える計算になり、元々賃金がさほど高くない層にとっては働くインセンティブがわかない状況になっています。

□ ブレイクイーブンインフレ率

ブレイクイーブンインフレ率とは、市場が期待するインフレ率を意味します。

この1年間「5年ブレークイーブンインフレ率」と「10年ブレークイーブンインフレ率」は上昇基調です。

(2020/01/01-2021/05/7)

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今週は5年の期待インフレ率は週の間は上昇基調でしたが、雇用統計を受けて腰折れしました。一方10年の期待インフレ率は雇用統計も関係なく上昇してひけました。

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一方金利は5年と10年ともに落ち着きを取り戻しています。

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この二週間でみても殆ど変わらず安定的に推移しています。安定的に推移しているのに弱含むハイパーグロース株という構図は今までと異なり気味の悪さを感じますね。

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金利は変わっていませんが一番反応したのはドル指数です。(ドル指数とはユーロやポンド、円など複数の通貨に対する、米ドルの為替レートを指数化したものでドルの相対的な強さを現る)

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雇用統計を受けてドル指数は下落してドル円も108円代半ばの水準でひけています。そして金もドルの軟化を受けて値上がりしています。以下は年初来の金の動きですが勢いを取り戻してきています。

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5. プットコールレシオ

ここでは年初来からの比率(%)を観察します。直近の投資家心理を確認。

・プット(Put)=投資家が株式相場下落を期待(年初来%が高い時)
・コール(Call)=投資家が上昇を期待(年初来%が低い時)

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・S&P500は2021年1月1日比 -0.76%(投資家は安心)
・NASDAQは2021年1月1日比 -13.16%(投資家は現在は安心、但し毎週週半ばにナスダック下落に賭ける投資家が急増)

NASDAQの動きに注目したいのですが、4月に入ってから毎週100%の確率で週半ばに下落に賭ける動きが起きています。上昇しては利益確定の繰り返しんの4月からの流れは5月になっても継続しています。レンジ内で短期トレードする人に有利な市場だったといえるでしょう。

6. Volatility index(VIX指数/恐怖指数)

VIXとは市場で取引されている価格から逆算された「株式市場のボラティリティ」のことを指します。株価指数は上昇時は緩やかに上昇し、下落時は急落します。市場参加者が高いボラティリティを見込んでいるということは、市場に対して不安を抱いていると想像できます。

S&P500指数とNASDAQのVIX指数の推移は以下となります。

・S&P500(ブルー、VIX) (4月7日引け時点:16.7)
・NASDAQ(オレンジ、VXN)  (4月7日引け時点:22.79)

5年↓↓

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3ヶ月↓↓

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VIX指数は株価の先行きにどれほどの振れ幅(ボラティリティー)を投資家が見込んでいるかを示す「株価変動率指数」のうち、米国株を対象にした指数。通常、株安が懸念される局面で上昇し、20を超えると不安心理が高まっていると解釈される。その場合、「株価が今後1年間に約7割の確率で上下20%の範囲で変動する」と投資家が予想していることを示す。 2008年の金融危機の際にVIX指数が80超に上昇して注目を集めた。18年2月と10月にもVIX指数の上昇をきっかけに米国株が下落する場面があった。VIX指数の上昇に連動して機械的な株売りを出す「リスク・パリティ」などと呼ばれるファンドが存在するからだ。(引用:日経新聞)

S&P500&NASDAQ共に、3月の下落相場からVIX指数は急落。S&P500に関しては20を下回る水準で安定的に推移しています。今のところ、オプション投資家は指数に先行きに対して自信を持っていることが伺えます。

しかし、NASDAQは5月に入ってからも20を上回る水準です。一時火曜日に35台まで上昇しましたが、雇用統計後に落ち着きをとりもどし22.79で引けました。

7. 空売り比率 (Short Volume)

空売り比率・ショートボリュームはNYSE(ニューヨーク証券取引所)で空売りされている株式の数をNYSEの総出来高との割合で示したものです。

この比率が高ければ投資家が市場をネガティブに見ていることが読み取れます。(「空売残」はShort Interestです。ここでは触れません。というよりタイムラグがあるので触れることが適切ではないのです。)


特に暴落局面で注視するのが有効で弱気相場が底をつける時というのは空売りの急増を示す数値の上昇が通常二回か三回現れるとオニールは言及しています。

それではまずS&P500指数の空売り比率は以下となります。S&P500指数で最も取引Volumeが多いETFであるSPYで見ていきます。

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5月に入っても安定的に推移しています。特に大きな空売りは見受けられません。

次にナスダックです。ナスダックインデックスに連動する0NEQの空売り比率ですが、5月に入ってからShort Volumeは激減しています。

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空売りが増大していないという点はポジティブに見受けられます。

8. 機関投資家やアクティブファンドマネージャーの動向

センチメントインジケーターは、個人投資家、機関投資家、海外投資家の過去12か月の株式ポジションと比較したもの。スコアが1を超えていたら、ポジションが増大していることを示し、-1を下回るとポジションが縮小していることを示しています。

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5月3日更新「0.5」(4月24日は「0.9」)。ポジションの増加幅は縮小しています

次にNAAIM Numberです。NAAIM Numberはアクティブファンドの投資動向です。100を超えるということはアクティブファンドがレバレッジをかけていることを意味します。

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1、2月はアクティブファンドの積極的な買いが入っていたことがわかります。3月は50%くらいまで引き下げ。4月は再び100を超えました。しかし5月に入ってポジションの縮小が見受けられます。

NAAIM Numberを見ると、5月に入ってアクティブファンドは強気姿勢を若干弱めていることが伺えます。

9. 注目経済指標の動向

以下が今週だされた経済指標です。製造業景況指数や新規受注などが強含み力強い景気回復期待があるなかで、失業保険申請件数が予想に対して大きく上振れています。

雇用統計の欄でも触れた通り、あまりにも魅力的な失業保険のために選択的失業を行なっている労働者が多く見られることが、失業保険申請数からも読み取れます。

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10. 米国企業決算スケジュール

集中していた決算シーズンも落ち着きを取り戻しつつあります。

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まとめ

もう一度最初の概要を再掲しておきます。

・ダウ平均とS&P500指数は最高値を更新するもナスダックは停滞
・累積売り抜け日もS&P500は4、NASDAQは4と蓄積。警戒感高まる状況。
・ナスダックとラッセル2000は50日移動平均線との攻防が続く。
・セクターはエネルギー、金融が牽引。
・金利は落ち着いて推移するもハイテク株受難相場は継続。
・イエレンの金利言及で火曜日にハイテクがクラッシュも雇用統計でリバウンド。
・雇用統計は市場予想を大幅に下回りドル安が進み金が回復
・雇用統計の悪化は魅力的な失業保険等により供給側の原因が指摘されている
・米国決算は今週がピークで来週からは少なくなってくる。

良い週末を!



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