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戦国note

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2023年10月の記事一覧

【書評】加藤理文・中井均「オールカラー 日本の城を極める」(ワン・パブリッシング)

 城は全国各地にあり、大勢の観光客が訪れるところも多いです。しかし、城の細かいパーツについてはどれだけ知られているでしょうか。  姫路城や彦根城は素晴らしい城ですが、国宝の天守だけ見て、満足して帰ってしまう人が多い気がします。  本書は、近世城郭(※戦国時代の中世城郭は対象外です)をパーツごとに分解し、「城はどう見ればいいのか」「どういう意図でこんな形状・配置になっているのか」を徹底解説しています。  城は、領主の権威を示す役割もありましたが、本質は戦闘のための施設です

【書評】和田裕弘『柴田勝家』(中公新書)

 数多の戦国武将の中でも、柴田勝家はかなり有名な方です。織田信長の重臣であり、信長の死後、賤ヶ岳の戦いで羽柴秀吉に敗れました。  猛将として知られる一方、歴史の敗者である勝家には負のイメージも付きまといます。創作では、あまり頭のよくない猪突猛進型の武将で、時代の流れについて行けず敗れ去った――という人物造形になっていることが多いようです。  しかし、勝家については同時代の史料に乏しく、実像は謎に包まれています。本書は、これまで意外となかった柴田勝家の本格的な評伝です。

【書評】乃至政彦「謙信×信長 手取川合戦の真実」(PHP新書)

 上杉謙信が戦った相手といえば、川中島の戦いでの武田信玄がまず思い浮かぶでしょう。織田信長の戦った相手ならば、今川義元や武田勝頼らが出てくるはずです。  そうした中で、「謙信対信長」の戦いがあったことを知っているのは、ある程度戦国史に詳しい方だと思います。  それは、天正5年(1577)に加賀で起きた「手取川合戦」です。川中島の戦い、桶狭間の戦い、長篠の戦いなどと比べると知名度は高くありません。  この戦いでは、上杉謙信の軍勢と、柴田勝家率いる織田氏の遠征軍が激突し、上

茅ヶ崎城~開発から逃れた中世城郭

 茅ヶ崎城というと、かなりマニアックな部類の城だと思います。神奈川県横浜市(茅ヶ崎市ではなく)都筑区にあり、現在は茅ヶ崎城址公園となっています。  城跡、特に土が主体の中世城郭は、道路や住宅などの開発で破壊されてしまうことが多いです。東京や神奈川などの人口稠密地にもかつては多くの城がありましたが、多くが姿を消しました。  しかし、茅ヶ崎城は曲輪や土塁などが(部分的にせよ)良好に保存されている珍しい都市部の城なのです。  この一帯には、旧石器時代~近世に至る膨大な遺跡群(