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花の枯れるのを見ていた



花の枯れるのを見ていた。
いつもならすぐに取り替えてしまうものを、
花瓶に水を足しながら、朽ちゆく儘に任せていた。

ふと、光を失い、頭を垂れる花弁に囲まれ、ただ一つ蕾のまま残っているものが目を惹いた。
それは今にも花開きそうに身を膨らましたまま、咲くともなく、枯れるともなく
少しずつ、少しずつ、その艶やかな色彩を失った。
天女の置き忘れた羽衣のように
尚一層燦爛と、香り立つ余韻を残して。


2024.4.9

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