見出し画像

さすが岡田惠和氏脚本のドラマ『日曜の夜ぐらいは…』心に沁みます

前クールは一週間後を心待ちにするドラマがたくさんありましたが、今クールはどれもこれもただ何となく「惰性で観ている感」が強いドラマが個人的には多くなってしまっています。

そんな中、やっと次週が楽しみに思えるドラマが始まりました。大好きな清野菜名と岸井ゆきの、バラエティー番組のイメージとは違って確かな演技力を兼ね備えている生見愛瑠の3人が主演の『日曜の夜ぐらいは…』。

全く前知識なく観てみたのですが、勝手にキャピキャピ明るい内容を想像していたら見事に裏切られました。3人それぞれに深い悩みを抱えながら、もがきながら生きている様がそこには映し出されていて、心に沁みる内容でした。

脚本家を調べてみたら、なるほど納得のこれまたほぼ彼の作品は観ているであろう岡田惠和氏のオリジナル脚本でした。「このドラマとっても好きだなー」と思って脚本家を調べるとたいてい岡田惠和氏脚本だったりして、私は心底彼の脚本の大ファンなんだと思います。登場人物の何気ない行動や表情を通して描かれる繊細な人間描写、テンポのいい会話劇が彼の脚本の魅力だと思いますが、今回のドラマもそういった魅力満載の非常に秀逸な作品です。

車イス生活を送る母と2人暮らしで、生活のためにファミレスのバイトをただ黙々とこなす清野菜名演じるサチ。元ヤンで、家族からは縁を切られタクシー運転手として生計を立てている岸井ゆきの演じる翔子。両親との関係性に難ありそうで、祖母と工場で働きながら田舎で2人暮らしをしている生見愛瑠演じる若葉。

この3人がとあるラジオ番組のバスツアーをきっかけに運命的な出会いを果たす・・・というところからドラマがスタートするわけです。3人とも普段は生活のためにただ働くだけの鬱屈とした毎日を過ごし、友情や恋愛を育む心の余裕もなく楽しみといえばラジオを聴くくらい・・・。

思えば日常生活って何か大きな出来事が頻繁に起こるわけでもなく淡々と過ぎ去っていき、それこそ惰性で働きながら日々のささやかな楽しみを見つけて生きているのが現実だと思います。20代の頃はそこに友達や恋人との時間が加わって平凡な時間に様々な味付けがされていく・・・でもこの主人公の3人は心の中では変化を求めながらもなかなか一歩踏み出せずに、自分の本当の想いにずっとフタをして生きているような気がしました。

3人がツアーの途中仲良く「お焼き」作りをしているシーンで、世話役のみねに写真を撮られ、笑顔の自分を見たサチが「ダメなんだけどなーこういうの。楽しいことあるとキツイの耐えられなくなるから・・・」と涙ぐむシーンにグッときました。

この気持ち、とてもよく分かります。楽しい時間ってその瞬間は花火みたいに盛り上がるけれど、すぐに目の前の現実に引き戻されてしまう”もどかしさ”と常に背中合わせだと私自身も感じることが多かったりするので。

楽しい時間を過ごす中でほのかな「友情」が芽生えたにも関わらず、結局連絡先も交換せずにいつもの日常に戻っていくという3人の別れのシーンが何とも切なかったです。「LINE交換しよう」という若葉にサチは「やめようそれは。最初はあれだけど、だんだん来なくなったりするのマジでダメだから私。だって・・・それは仕方ないし。それぞれの場所で生きてるわけだから。だから、楽しかったから!このままで・・・」と。

サチ自身何でも話せる友達が欲しい一方で、その存在ができることによって張り詰めた気持ちで日々頑張り続けている自分を支える自分の中の”何か”が壊れてしまうような不安があったのかもしれませんね。

でも、嫌なことがあった時に誰かにしゃべりたくなっている自分に気づき、あの時過ごした3人での時間を忘れられずにいることを痛感させられるサチの心の揺れ動きが上手く描かれていました。

バスツアーのレポートがラジオ番組の中で流れて、3人のことが語られるとそれぞれに色々な想いが溢れ出てきて・・・。みねの「人と人が出逢ってしまった瞬間を見た」という言葉が3人の心に突き刺さったのではないでしょうか。それぞれの日常でキツイことがあるとサチのマネをして一番高いアイスを食べるようになった翔子と若葉。離れ離れになってしまったけれど、心は確かに繋がっている3人。

再びのバスツアー。翔子と若葉は再会を果たすものの、そこに最初サチの姿はなく。バスが出発した時に突如現れたサチ!実は前回のツアーの時に3人が1枚ずつ買った宝くじ。一等3,000万円が当たったというサチはその時約束した通り当選金を山分けをするためにツアーに参加することにしたということが判明しました。「3人で幸せになろう」というサチ。次回はこの宝くじの当選金を受け取りに行ってさてどうなっていくでしょう?

ここから先の展開がまだまだ読めないわけですが、今クール岡田惠和ワールドにどっぷり浸りながら楽しみたいと思っています。

ちなみに今クールもう1本。予想外に結構楽しめるドラマが『グランマの憂鬱』。コメディー・タッチかと思いきや、なかなかに深い人間ドラマが描かれていてオススメです。

今回も、長い文章最後まで読んで頂きありがとうございました。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?