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2020年ノーベル生理学医学賞はC型肝炎ウイルスの発見に!

ノーベル賞受賞者発表週間の初日、ここ数年で恒例となったYouTube配信の記者会見で、2020年生理学医学賞はC型肝炎ウイルスを発見した米国の3名の研究者に授与されることが伝えられた。

おそらく次の週刊ダイヤモンド誌連載コラム「大人のための最先端理科」に書くことになると思うので、その内容には踏み込まないが、一言感想を。

まず、同様の重要な科学分野の賞の中で、今年は新型コロナウイルス感染症のために受賞者発表を見送ったところもいくつかある中、ノーベル賞は粛々と準備をし、今年も受賞者を発表した、という点に、ノーベル財団の意志を感じた。受賞者無しの年は、過去に何度もあったが(部門によって異なる)、第二次世界大戦中の1940-1942年以降は、毎年誰かが選ばれている。「ノーベル賞受賞者を選んで発表すること」が平和の証であるとでもいわんばかりの矜持のように思える。

1960年代、輸血後に肝炎になる人が多い中、同定されたB型肝炎ウイルスについては、1976年にすでにノーベル賞受賞対象となっていたが、新型コロナウイルス感染症が世界中で蔓延している今年に、C型肝炎ウイルスの発見が受賞対象で選ばれたということも興味深い。受賞者は発表順としてもハーベイ・オルター、マイケル・ホートン、チャールズ・ライスであるが、オルター博士が1975年に「非A非B型肝炎」の存在を示した後、ホートン博士が1989年にウイルスそのものを同定し、ウイルスをチンパンジーに感染させて、本当に病気を起こすということを証明したのがライス博士。

結果、輸血の際にウイルス汚染を検出して、そのような血液製剤は用いないことにより、C型肝炎は劇的に減少。治療法としてはインターフェロン等もあるが、有効なワクチンはまだ得られていない。新型コロナウイルス感染症治療法に関しての道程も、決して短いものではなさそうに思える。

上記日経サイエンスの古田編集長による速報から、模式図を拝借しておく(ノーベル財団発表のものを改変)。

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今年の授賞式は、受賞者がストックホルムに出向くことはなく、テレビで放映されるあの有名な晩餐会も取りやめ。新型コロナウイルスは、やや商業的になりすぎたきらいのあるノーベル賞受賞関連イベントを、原点に戻って見直すきっかけにもなった訳だ。

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