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大暗室ミステリーツアー by こみねこ

 ミステリをはじめて読んだのは小学生の時。ワクワクした思い出のおかげで、私は現在に至るまでミステリを読んでいる。ホームズやルパンの全集、「推理探偵傑作シリーズ」、「マガーク少年探偵団」、クリスティーの短編集など、図書館にあったシリーズは片端から読んだ。そのなかでも「少年探偵江戸川乱歩」シリーズは、小学生の私を図書館に足繁く通わせ、1か月の睡眠時間を削った魔性のシリーズ。それなのに今では内容を覚えていないのだ!

 もともと私はあまり再読をしないため、基本的には忘れる一方だ。だって読みたい本は次々現れるのだ。一度読んだ本はどうしても後回し。幸いにしてタイトルと読後感だけは覚えているので、読んだのにまた買ってしまったということはないのだけれど。読書会に行くと、皆さん本当によく覚えていて凄い。

 そこでこの度、子供の頃に読んだ本は大人になっても面白いのかを検証するべく、「少年探偵江戸川乱歩」全46巻のうち、図書館で1番多く借りた=面白かったはずのものを再読。
 その名も『大暗室』!!子供の頃のワクワクを再び!ページをめくる!

 …読書中…
 
 読了。よく好きになったな、小学生。
 というか明智探偵も二十面相も出てこない!そうだったっけ!?
 ヒーローと悪役の構図はほとんど明智小五郎と二十面相なのだけれど、明智小五郎は名前が一瞬出るだけで、少年探偵団は影も形もない。それどころか登場人物に少年がいない。シリーズ名、少年探偵だよね?内容も子ども向け要素よりも、ダークサイド要素の方が大きい!悪役は二十面相と違って、殺しもなんでもあり!ポーの某作品が拷問としてそのまんま登場していた!仮面で火傷を隠すあるある!地下帝国の労働って、某人生逆転でざわざわするアレじゃないですか!?

 結論としては、トンデモ設定等に突っ込みつつ、ほとんど初読の気持ちで楽しめた。二十面相とパノラマ島と乱歩的アンダーグラウンドを一度に楽しめないかと思う人におすすめ。小学生の頃から大人向け乱歩やポーが好きになる要素があったということか。または子供の頃に刷り込まれたのが、今になって現れただけなのかも。記憶はなくても頭のどこかにきっと残っているのだ。

 最後に、光文社の江戸川乱歩全集の『大暗室』は、「怪人二十面相」と「大暗室」を収録しているので、乱歩が子ども向けと大人向けをどう書き分けているのか比べてみるのも面白いかも。

後日談

 後日、「少年探偵江戸川乱歩」の『大暗室』を見てみたところ、表紙からして少年がいる!というわけで小林君は登場していた。ヒーロー有村君は明智探偵になっていた。もちろん二十面相も登場。しかし因縁を作り出すためにかなりムリヤリな部分も。明智探偵と二十面相にあるまじき行為が!やっぱり乱歩のオリジナルの方が良いですね。

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