エラリー・クイーン「中途の家」読書会レポート
2023年4月16日(土)に開催されたエラリー・クイーン「中途の家」読書会のレポートをお届けします。
第一幕
告知文はこんな感じでありました!
そして、4/16土曜日。今年度もはじまって間もない中、せんだい探偵小説お茶会恒例のクイーン祭りが参加者14名で開催されたのであります。
第二幕
(以下、真相に触れるところがありますので、未読の方はご遠慮いただければと思います! 既読の方はより楽しめます!)
どんな感想や疑問が出てきたかというと。
・情報開示がご都合主義でアンフェア。
・パイプの匂いに気付くのでは?
・中だるみせず、小説として面白い。ストーリーとして読みやすかった。裁判小説としても面白い。読み手が楽しめるようにした!
・コルク使用方法には感心!
・ロジックの展開が面白い!
・パイプを使っているから女では無い。そうでしょうか?
・ペーパーナイフを握ってしまうのは如何なものか?
・コルクを燃やす暇があったら、逃げて電報で伝えればいい。
・犯人を女性と決めつけていた。
・犯人がわかった。
・小説的な厚みがあったが、相変わらずパズル小説。どちらの人物として殺されたのか、死体はパズルの材料としてだけ。何もわからないまま終わってしまう。
など、正直な感想を皆様に語っていただき、ホストは読書会中にミステリの深淵に触れっぱなしの状態で、幸甚でありました!
幕間 ホストのあれこれ
01.「初読から2読まで」の感想
高校1年生の頃。早川HM文庫版
マッチの数からの推理に感銘を受ける。殺人は1件だけの派手なものではないにもかかわらず、謎めいた展開と読者への挑戦に心をわしづかみされました。マッチでコルクを焦がして書く道具にすることと、燃えさしからパイプの利用者をしぼり、女性の容疑者から男性へ、マッチ箱から限定していく場面にはハラハラドキドキ。エラリーの推理を追うためにページを繰る手が止まらなかったことを覚えています。
大学3年生での2読目は創元推理文庫で。今回も初読時と同じように楽しむ。終盤の推理部分には同様にハラハラドキドキ。読了時に下宿部屋を照らす夕焼けが今でも思い出されます。黄金体験と感じたのは、この時の景色が脳裏に焼き付いているからなのかもしれません。青春の1ページを飾った名作と記憶されました。
02.「そして3・4読目」の感想
3度目の読了時、こんなにあっさりとした推理だったかしらと感じました。もっと複雑でスリリングだったと記憶していたのは、まだミステリに対して初心なところがあったのではと思っていたところ、とても気になることを発見しました。それはコルクを焦がして筆記用具にして使用するというところです。女性だったら口紅を使用して、アンドレアにメモを渡すことができたのに、そうではなかったから男性が犯人という推理でありましたが、メモを記す別な方法があるではありませんか。それは、被害者の血をインク代わりにし、マッチをペンの代わりにして書くという方法であります! クイーンだったら、アンドレアが戻ってくるとは思わなかったフィンチが混乱したため、アンドレアに血で書いたものを渡すなんてできなかったとか、血を使おうとしたけれど被害者の息があったので使えなかった等、説明を入れそうなものでありますが、そうしなかったのは、読者がそこに気付かないと思ったのだと思います。それと解決の論理に絶対の自信(ダネイの自選3作の理由)があったからなのかもしれません。もしくは、読者の指摘を待っていて、指摘があったとしたら、回答しようとしていたのかもしれません。匂いについても同様であります。
クイーンは手掛かりの提示を確信犯的な隠し方をしている作品が多々あります。そのことでクレームが出たとしても、作者が二人とは気付かなかったでしょうと(免罪符として)答えるつもりだったのかもしれません。
03.戯言
デヴィッド・リンチの映画「ブルーベルベット」の舞台はランバートンであります。それと被害者の二重生活は、「ツインピークス」の被害者と犯人にとも重なります。エラリーの平衡世界を行き来しているかのような、キャラクター作りに関しても、25年振りの「ツインピークス」とも重なるように思われます。やはりリンチはクイーンを愛読していたとしか思えません。
終幕
コロナウイルスがインフルエンザと同じ5類相当となり、国名シリーズ新訳読書会も残る一作となりました! 掉尾を飾るのは、国名シリーズの中でも1、2位を争う人気作「ギリシャ棺の秘密」!
三大奇書を思わせるボリュームと熱量! これを読まずしてエラリー・クイーンは語れない! いや、ミステリを語れない!
ああ、クイーン祭りが待ち遠しい!
文責 クイーンファン
(参考文献)
「エラリー・クイーン論」飯城勇三著(論創社)
「エラリー・クイーン・パーフェクト・ガイド」飯城勇三編著・クイーンファンクラブ(ぶんか社)
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