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【も〜っと】千田の犬について_2 ※人権なし

こんにちは。「無資格・無免許・3,000円」でノーライセンスの国選弁護人をしています。千田といいます。よろしくお願いします。

この記事では、千田の飼う犬について詳しくお伝えします。

前回の続きですが、この記事から読み始めても特に支障はありません。


睫毛

ご存知の通り、千田の犬の顔には引き寄せられるような不思議な魔力がある。いくつかあるその理由のうちのひとつが、くっきりとした二重だ。なめてるキャンディーの匂いに感づかれるほどの距離で近づくと、それは瞼(まぶた)ではなく睫毛(まつげ)であることがわかる。この犬は睫毛だけ色が変わっているので、あたかも二重瞼のように見えるのだ。

僕が思うに、犬を飼い可愛がることは、こうした類の錯覚や勘違い、恣意的な拡大解釈を積み上げることだ。手を舐めてくるのは懐いているからではなく単純に味が好きだからかもしれないし、帰宅時に吠えるのだって実際は歓迎の挨拶ではなく異音に対する威嚇かもしれない。

犬も僕の振る舞いを、勝手に都合のいいよう解釈してくれているだろうか。

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奔放な舌

この犬は四六時中、口から——ときには顔からも——舌がはみ出している。そんなの常識ですよ、舌を出さないほうがマナー違反ですよ、というが如く平然とした顔で、ベロを露出しているのだ。

犬の写真をTwitterにあげ続けていると「どうしてそんなにベロがずっと出ているんですか?」とよくDMで聞かれる。知らん。いやいや。知らんって。「いつも出ているんですか?」という質問ならまだしも「どうして」ってなんだ。いやだから知らんって。そういうもんやから。

憎まれ口ばかり叩いていてもしかたないので、真剣に回答すると以下。

チワワなどの小型犬は、人為的な品種改良によって生まれたものだ。小型で可愛らしく、運動量が少ないため飼いやすい。頭蓋を小型化する過程において舌のサイズダウンだけが間に合わなかったが、その姿が非常に愛らしいため、この種を「成功」と位置付けて量産を続けた————という説が有力である。近似する例をあげると、ブルドッグは仔犬の頭が大きすぎて帝王切開でしか生まれることができない。チワワやヨークシャテリアのような小型種も、母犬が自然分娩には耐えられないため帝王切開での出産が一般的だ。

千田豆知識時点より抜粋

しかし僕に質問を送ってくる人たちは、おそらくこんな説教じみた話を読みたいわけではないだろうから、と諦めて適当にリアクションスタンプを付けて通信を終了することが常である。

どちらかといえば僕はこうした品種改良による愛玩動物には否定的だが、それは人間の行為の是非であり、動物の存在の是非ではない。まして各個体の存在は否定のしようがない。前稿でも似たようなことを書いたが、生まれてきてしまった命は可愛がるしかない。この議論は難しい。

とにかく今はっきりと言えることはみっつ。人間が愚かだということ。犬に罪はないこと。少なくとも千田の犬は屋根のある場所で舌を出しながら安全に暮らしていること。

舌の話に戻ろう。この犬の舌は、体調や心持ちに応じて様相を変える。散歩に飽きて疲れた時はだらしなく垂れ下がり、機嫌の悪いときは露出面積を半分にする。また、この舌は寒いときのみ口内に仕舞われる。シンメトリーで引き締まった顔は、鼻の高さが強調されて凛々しく聡明に映る。本当は九九もできないのに大したものだ。

それ以外の場面においては例外なく舌を顔の右側にぶら下げている。昼夜も問わない。

寝ているとき、無防備をいいことにここぞとばかりに舌を摘む。餅のようにやらかくて、炎のように熱い。

犬の手は、想像を絶するほど想像通りの形をしている。まさしく誰がどう見ても犬の手だ。てのひらがあり、よっつの肉球がある。人間でいう手首や足首の位置に、我々の親指のようなものがもうひとつあるのは知らなかった。

奴はうちに来た時点でもう6歳だったが、その頃は無垢で柔らかい肉球をしていた。散歩の経験が無かったからだ。残念ながら彼の過去はあまり美しいものではない。今では程よく頼もしい硬さの肉球を持っている。寝床では犬に踏まれた敷布団がむんずと沈む。

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背中

朝は朝日が、夕方には夕陽が差す。当たり前のことだが、当たり前を当たり前にするのは案外難しいことはあなたもわかってくれるだろう。南窓の集合住宅に住める確率は単純計算で25%しかない。幸運にも南窓かつペット可のところに引っ越すことができた。本当に運が良いと思う。朝日と夕陽が犬の背中を掠めると、彼の毛は黄金色に燦めく。

心臓

詳しいことは難しくて忘れてしまったが、この犬は膝が悪かった。二度の手術を経て現在は健康体だ。

当時、鬼滅の刃の寺内きよみたいな獣医さんの先生が言うには、手術の難易度それ自体は大したことないが、犬の体力が不安とのこと。膝ほどではないが心臓も少しガタがきており、麻酔に耐えられるかどうかは本犬の頑張りしだいだという。

犬は部分麻酔ができない。手術となれば全身麻酔で眠らせるの一択だ。「膝の怪我はまだ致命的ではないが、老いて心臓が弱くなれば麻酔ができなくなるので、できれば早めの手術が望ましい」と告げられた。

小さくて尊大な毛の塊に、心の臓があるなんて。もちろん知識としては常識的に持ち合わせている。単三電池で動いているわけではない。しかしまったく実感したことはなかった。僕は自分の心臓にすら無頓着である。

心音を聴いてみよう。犬が仰向けで脱力しているときを狙って、耳を近づけてみる。毛。最初の感想はこれだ。毛が僕の顔の左半分を覆う。それから匂い。豆乳を煮詰めたような、またはポップコーンを薄めたような白くて優しい匂いがする。自分の顔のパーツの凹凸をブラシのようにして、犬の腹を激しく擦る。悪くない。また擦る。最高。しまった、心音を聴きに来たんだった。目を閉じて耳を胸に当てる。よくわからない。とにかく感じるのは毛。そして匂い。今度は抱き抱えて、本格的に犬の腹を顔で擦る。もう心音はどうでもいい。あまりに好き勝手するもんだから犬は機嫌を損ねて逃げてしまう。

鈍感な僕にでもわかるほど爆音の心音が鳴るようであれば、その心臓は麻酔の心配なんていらない。

日を改めて、こんどは熟睡しているところに忍び寄り、犬の胸に耳を近づける。すーすーと寝息が聞こえる。心音はわからない。僕が思うにこの犬は単三電池で動いている。


ぷぴーと鳴る。指で摘むハリボーと同じ硬さ。


▼休憩です

お付き合いいただきましてありがとうございました。いったん終わり。

犬については引き続きnoteで書いていきたいと思います。

以下、次回予告を兼ねた自分用メモを残します。

■メモ : 犬について書くべきこと
目、膝、ちんちん、毛、耳、野生
犬が嫌いなこと、尻尾、お手、おむつ、ケージ、薬、夜泣き、留守番
伏せ、敵のダックスフンド、背中、海、ごくつぶし、爪、歯茎、唾液、背骨

あざした

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