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【千田琢哉の頭脳】Vol.0437(2010年4月16日発行のブログより)

広告業を営んでいます。このところ業績が落ち込んでいますが、それは提案内容が「クリエイティビティがない」「分析が甘い」と評価されていることからの受注力低下だと顧客アンケート調査と顧客インタビューの結果、結論付けられました。ただし、私の正直な本音としてはこれらの能力は素養によるものが大きいと感じます。かといって今から従業員を入れ替えるのも現実的ではありません。クリエイティブ能力や分析力は鍛えられるものなのでしょうか?


(東京都・会社経営・Tさん・男性・42歳)

クリエイティブな仕事、分析力が求められる仕事ができるようになるには、抽象度の高い問題を考えさせる訓練をすることです。

具体度の高い訓練の典型が日本の受験勉強です。

「大化の改新は何年でしょう?」

「世界の人口は何人でしょう?」

といった質問は知っているか知らないかの問題ですから
クリエイティビティでも分析力でもありません。

換言すれば正解が1つしかない問題が具体度の高い問題です。

つまりすでに世の中の多くの人たちが正解を知っていて、
それを知らない人に答えさせるだけですから、
新しいものを生み出しているわけではありません。

抽象度の高い質問はたとえばこんな感じです。

「どうして返ってくる見込みのない年金という名の年貢を日本人は
大人しく払い続けなければならないのだろう」

「どうして世の中がこんなに大きく変わったのに、
未だに憲法が変わっていないのだろう」

「どうして地球環境に悪いことをいているF1レーサーが
あんなに尊敬されてお金持ちなんだろう」

つまり教科書には正解が載っていませんし、
ど真ん中の正解は1つに絞ることができません。

それを考えることが頭を鍛えることです。

正解をそのまま教える仕事は年収も少ないです。

しかし考え方を提供するクリエイティブな仕事は
年収が結果として多くなりやすいです。

正解が1つに絞れないことを考えていくわけですから
当たり前といえば当たり前です。

たとえば「返ってくる見込みのない年金の問題」であれば、
こんなことを考える中学生がいたとしても不正解とは断言できません。

「恐らくこれから辻褄を合せる際に国民が賢くなりすぎたら
都合が悪いから、僕たちをゆとり教育でバカにしておかなければならない
という国策ではないか」

これについてクラスメイトが議論をしていくのが
クリエイティブであり分析力を鍛えることになります。

1000年後の世界の教科書には、

「今は昔、アジアの端にそれはそれはちっぽけな日本という国が
ありました。古代奴隷制度顔負けの仕組みが成り立っており、
自分たちが選んだ代表者に散々苦しめられながら奴隷たちは
毎年3万人以上も自殺していたということです・・・」

と掲載されているかもしれません。

笑い話ではなくて、本来戦略というのはそういうものなのです。

「今のまま行くと君たちの世代は年金がもらえなくなるかもしれなせんね。たいへんですね。でもちゃんと年金は納めなくてはいけませんよ。
じゃあそういうことで」

で授業を終わってしまってはそこで思考がストップしてしまい、
子どもたちは、

「正直者がバカを見るんだからニートが一番賢いな」

となっても不思議ではありません。

これは会社の研修でも部下育成でも同じです。

質問を親切にし過ぎては思考力を鍛えることなどできません。

あくまでも抽象的な問題を考えることによって頭は鍛えられるのです。

抽象的な問題をいかにして具体的に噛み砕いて落とし込んでいくのか、
というのが知性なのです。

教育とは時間がかかりますが、
その場限りのやさしさがいかに将来を暗いものにするかを考えると
ゾッとするでしょう。

それでも我慢して抽象的な問題を与え続けなければならないのです。

...千田琢哉(2010年4月16日発行の次代創造館ブログより)

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