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【千田琢哉の頭脳】Vol.0382(2010年2月20日発行のブログより)

ホテルで働いています。接客サービスで悩んでいます。うちのホテルは一応シティホテルということにはなっていますが、まだまだ2流水準だということで全従業員が必死になってサービス向上に向けて取り組んでいます。しかし厳しい研修や従業員同士の指導を繰り返してもなかなか客室や宴会場の稼働率に反映されずに悩んでいます。がんばればがんばるほど裏目に出るというのでしょうか・・・。他の1流と言われるホテルと何が違うのか。1流と2流の違いは何か・・・悩んでいます。

(愛知県・会社員・Kさん・男性・37歳)

いくら1流ホテルでも
1秒で一気に4流に落ちぶれてしまう瞬間があります。

世の中には1流があって、2流があって、3流があるのではありません。

1流と4流しかないのです。

「すばらしい」「お話にならない」の2つしかないということです。

たとえば1流ホテルの宴会でお客様が賑わっていたとします。

ものすごく楽しんで盛り上がっています。

ところがトイレに出かけようと会場の隅に移動したお客様に
壁越しに従業員のどなり声が聞こえた。

恐らく先輩従業員が後輩従業員に仕事上の注意をしたのでしょう。

一見これは仕事上ではやむを得ないような気がしてしまいます。

しかしやむを得ないことではないのです。

たった1人のお客様に嫌な気分にさせてしまったのです。

仮に舞台裏で上司が部下に注意をしているところが
うっかり聞こえてしまったとしても、それは「うっかり」ではないのです。

それはせっかくお客様が美術展で絵画観賞を楽しんでいるところに
絵画に墨汁をかけられたようなものなのです。

たった1人を嫌な気分にさせることにより、
悪い口コミが広がるからダメなのではありません。

たった1人を嫌な気分にさせることにより、
その人が嫌な思いをした気分が周囲のお客様に
伝播してしまうのがダメなのです。

つまりその場を楽しんでいる人たちに
「不幸」がどんどん伝染してしまうのです。

たった1人のお客様がたまたまトイレに出かける時に
運悪く従業員同士の罵声を耳にしてしまった。

その人はまるで自分が怒鳴られたような嫌な気分になって
トイレから宴会場に戻ってきます。

そのお客様の顔には笑顔はもうありません。

どんよりとしたオーラを背中にまとったまま戻ってくるのです。

その人と接した最初の1人目にどんよりとしたオーラがそのまま伝染し、
最初の1人が今度は2人目にどんよりオーラを・・・

この繰り返しによりその宴会は一瞬で失敗に終わるのです。

「大きな間違いはなかったのに、何か後味が悪かった」

「失敗はなかったのに、何か腑に落ちない」

「最近リピーター率が落ちているが原因がよくわからない」

ホテル側もお客様側もその真因は絶対にわかりません。

でも真因というのはいつも例外なくわかりにくいものなのです。

今回の舞台裏での従業員同士の怒鳴り声というのは
実は1流ホテルほどよくある話です。

それだけサービスに対する想いやレベルが高いので当然といえば当然です。

1流とは何かとてつもないサプライズを常に求められているのかといえば
必ずしもそうではありません。

当たり前のことを決して見逃さない力なのです。

1流では舞台裏こそが表舞台なのです。

ついつい口にしたひと言が人間の本音であるのと同様に、
ついつい見られてしまったのがその会社の本音であり
実力ではないでしょうか。

...千田琢哉(2010年2月20日発行の次代創造館ブログより)

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