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【千田琢哉の頭脳】Vol.0594(2010年9月20日発行のブログより)

謙虚になる方法ってありますか?私は小さな成功ですぐにはしゃいでしまい、人を見下してしまう悪癖があります。もちろん、年齢とともに表面上はごまかせるようになってきましたが、内面では何の変化もありません。そんな自分がとても嫌いです。本当は傲慢無礼な人間なのに、嘘をついて謙虚になっても意味がないのはわかっているのですが・・・

(大阪府・会社員・Tさん・女性・30歳)

できるだけ感受性の高い若いうちに才能の塊である天才と出逢って、
打ちのめされておくことです。

瀬名秀明さんというSF作家がいます。

1995年に『パラサイト・イブ』で日本ホラー小説大賞を受賞されました。

『パラサイト・イブ』は大反響を呼んでその後映画化されました。

瀬名さんは当時大学院生で博士課程に通っていました。

私はまだ学部生でした。

ある日、いつも通りに仙台の一番町通りにある丸善に行ったら、
ものすごい人だかりができていました。

仙台名物七夕祭りでもないのに不思議です。

誰か芸能人でも来ているのかな、と思って、行列の先を覗くと、
とても地味な格好をした若者がいました。

2002年にノーベル化学賞を受賞された、
田中耕一さんをテレビで見たとき、すぐに瀬名さんを彷彿させました。

「いったい、この人は何者だろう・・・」

行列に並んでいる人たちの手に持っている本を見て合点がいきました。

自分とたいして歳が変わらないというのに、
世の中には凄い人がいるものだな、と焦りました。

『深重の海』で直木賞を受賞した津本陽さんならまだ納得がいきます。

津本さんは私の祖父の世代であり、かけ離れ過ぎてピンとこないからです。

でも、瀬名秀明さんを間近で見たときには、不思議な衝動に駆られました。

すぐにその行列の最後尾に並んだのではありません。

ヤバイ、と思って勉強しようと思ったのです。

もちろん、私はすでにその本を読んでいましたが、
サインしてもらう気にはならなかったのです。

上手く表現できませんが、

「自分はその行列に並ぶ側になってはいけない」

と本能的に思ったのかもしれません。

『パラサイト・イブ』は単なるホラー映画ではありません。

ミトコンドリアが地球外生物であるという仮説がなぜ成立するのかを
理解できていないと、この映画の本当の意味はわかりません。

単に、葉月理緒菜がかわいい・・・とか、CGが怖い映画だった、
で終わってしまいます。

手もとに瀬名さんの本『ミトコンドリアのちから』があって、
今でも何度も読み返しています。

瀬名さんは、やはりとんでもない天才でした。

20代半ばであの小説を書くことができるというのは、
私の中ではどう贔屓目に見てもありえませんでした。

とんでもない天才の、まだあどけない地味な学生の頃の姿を生で見ることができて本当に幸せでした。

いつもあの光景を思い出す度に、謙虚になることができます。

思い出す度に、ゾッとします。

悪夢で目が覚めます。

学生時代にとてつもない才能の塊、天才に出逢っておくと、
謙虚になることができるのです。


追伸.
通称「貧食」というカレーライス専門食堂がありました。
学内で1番人気の食堂でした。
カレーライスが1杯160円で食べられた、
貧乏学生の強い味方だったからです。
そこで伊坂幸太郎さんともすれ違っていたはずです。
なぜなら・・・、

...千田琢哉(2010年9月20日発行の次代創造館ブログより)

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