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アンドロイド転生610

2118年3月19日 夜
山間:斜面の下

モネは瞼を開けたもののその瞳は虚ろで意思があるように見えなかった。ルイは決意する。一刻も猶予を許さない。今直ぐに車に運ばなければ!だが背負って斜面を登る事は叶わなかった。

ホログラムのエリカが叫んだ。
『タケル達が着いた!斜面の上にいる!』
ルイは泣きそうになった。早く!早く来てくれ!そしてモネを助けてくれ。

間もなく2人がやって来た。エイトはモネを軽々と抱き上げてタケルの背に乗せベルトで固定した。タケルは確固たる足並みで斜面を登っていく。その後をルイが追った。

タケル達はあっという間に山道に停車しているザイゼンの車に到着したがザイゼンはなかなかやって来なかった。車のドアはオープンしない。ザイゼンと同期されているのだ。

アリスのドローンがタケルの真上にやって来た。
『モネは低体温症なの!早く温めないと!イヴ!車をオープンして!』
車のロックが外れタケル達は乗り込んだ。

アリスが叫ぶ。
『服を全部脱がして!タオルで拭いて!』
緊急事態と言えどルイは躊躇する。タケルは人間の心があるのだ。やはり動けなかった。

自意識の芽生えのないアンドロイドのエイトは冷静だった。さっさとモネを全裸にする。真っ白なモネの身体には全く生気が感じられなかった。まるで人形のようだった。

エイトはルイを見た。
「拭いて下さい」
ルイは慌ててリュックからタオルを出した。2枚しかないが足りるだろうか。

女性の裸など見た事がないルイは緊張する。だが心を無にしてモネの身体を拭いた。モネは目を瞑り微動だにしない。成すがままだ。モネの身体に手が触れた。なんて冷たいんだろう…。

ルイは不安で堪らなかった。
「モネ…モネ…しっかりしろ…!」
エイトがモネの身体を起こして背中を拭き始めた。モネの首がガックリと前に落ちた。

車の外でホログラムのアリスが叫ぶ。
『モネは震えてる⁈意識ある⁈』
タケルは首を振った。
「震えてない。全く意識がない」

アリスの顔が引き攣った。
『誰か!モネを抱き締めて!温めて!すぐ!』
タケルとルイは顔を見合わせた。どうする…?どうすれば良い?誰がやるんだ?

エイトは服を脱ぐと上半身裸になった。体温を上げる。2人の間に割って入った。
「私が温めます」
大きな身体がモネを包み込んだ。

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