アンドロイド転生724
白水村集落:リペア室
「リョウ。話があるの」
キリが声を掛けるとリョウの背中が強張った。椅子を回転してキリに向き合った。
「うん…」
キリは神妙な顔をしている。
「ずっと聞きたいと思っていたの。いい?」
リョウは唾を飲んだ。
「う、うん…」
キリは腕を組んでリョウをじっと見つめた。
「タケルが出て行ったり、会議や…ミオのウィルスの件で色々あったから、ずっと先延ばしにしていたけど…エリカに脅されたって…なに?」
1ヶ月以上の前のこと。タケルがエリカに暴挙を働いて村を去った。その数時間前に彼から尋ねられたのだ。ドローンで自分を追尾したのかと。結果、エリカが追った事が判明した。
キリがエリカを咎めると悪びれもせずに事実を認めた。キリはその単純さに呆れ、執念深さを嫌悪した。自意識が芽生えたアンドロイドにしてはあまりにも横暴で自分本位だ。
リョウはドローンで追う女など嫌だと馬鹿にした。するとエリカは堂々とキリの目の前でリョウを脅迫し、彼は目に見えて憤怒した。どうやら何かしらの弱みを握られているようだ。
マシンが脅迫をするのはキリは承知だ。イヴが良い例だ。マフィアのルチアーノやゴーストのオクザワヒカリなどを思うままにした。だがまさかエリカまでもが脅す側に回るとは。
リョウにずっと尋ねたいと思っていたがあまりにも色んな事が多過ぎた。漸く一息がついた。ここでハッキリさせよう。彼は従兄弟だが弟みたいなもので距離感が近いのだ。
リョウは深く溜息をついた。唇を舐めると目を瞑り拳を額に当てて何度も叩いた。
「俺は…俺は…酷い事をした。本当に本当に馬鹿だった。くそっ!畜生!」
「何があったの?」
リョウはまた溜息をついた。目を見開くと漸く顔を上げた。その瞳には決意が現れていた。
「俺はサキが好きだ」
キリはゆっくりと頷いた。
「うん。知ってる」
リョウの切ない想いは痛いほど伝わっていた。
「で、で…俺は…盗撮したんだ」
キリの目が見開かれた。
「え?」
「サキは…ずっとケイと付き合ってるだろ。人間には興味がないだろ。だから…は、裸を…」
リョウを拳でデスクを叩いた。
「裸を…盗撮したんだ…!最低だろ!大馬鹿野郎だよ!俺は!」
キリは黙っているが表情に怒りが現れていた。
「それがエリカにバレた。アイツに脅されるまま…俺はずっと協力していたんだ」
「何の協力?」
キリの声音が冷たかった。
※キリがエリカを咎めたシーンです
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