アンドロイド転生692
2118年4月
白水村 サキと両親の部屋
アンドロイドのケイと交際している人間のサキ。両親はずっと目を瞑っていたが本当は将来を案じてケイとの別れを望んでいた。娘は31歳。国の一員になって子供を成して欲しかった。
父親は娘を説得する。
「誰か男を見つけて結婚しろ!それがお前の幸せなんだ!分かるだろ?」
「自分の幸せは自分で探す!」
母親も心配そうに眉根を寄せていた。
「サキ。私達はずっとあなたの自由にさせていたよね。でもね?よく考えて。この先、私達がいなくなったらどうするの?」
サキは溜息をつく。
「ケイがいるもん。私はね?旦那とか子供とかに興味がないの。ケイと一緒ならそれで良いの」
「そんな事はまだ若いから言えるのよ?」
サキは笑った。
「お婆ちゃんになった私と孫みたいなケイが暮らしていたら、それはそれで安心じゃん!私は大丈夫だから自分達の老後の心配をしなよ」
父親は眉を吊り上げて顔を赤くした。
「子供の心配をしない親がどこにいる!!」
「あー。もう煩いなぁ。放っておいてよ」
サキは部屋を出てケイの元に行ってしまった。
トワと同室だったケイだがトワが機能停止となり、いわば死んだ事で1人部屋になっていた。サキはそれを機会にケイの部屋によく泊まるようになった。親は不服だったが大目に見ていた。
だが昨晩はとうとう堪忍袋の尾が切れてケイの部屋に乗り込んだ。同じ存続派のタカオが間に入って何とか宥めた。明日には村の未来が決まるのだと。それからまた判断しろと。
サキはケイの部屋に泊まり、愛を交わした。それが彼女にとって幸せなのだ。サキはケイに抱かれながら実感する。私は今を生きている。ケイを愛している。子供などいらない。
サキは昨晩を思い出して笑った。全く親の過保護もいいところだ。31歳なんだ。放っておいてくれ。サキはケイの腕に腕を絡めた。
「滅亡したって構わないよ。私は」
ケイは無言だった。本当にそれで良いのかと最近は悩んでいた。それがサキの幸せなのか?
「ね?ケイ?私はあと100年位生きるかもしれないけれど、ケイは一緒にいてくれる?」
勿論一緒にいたい。サキが1番大事なのだ。大きな存在なのだ。だが…しかし…。
「簡単に約束は出来ないなぁ。僕だっていつ故障するか分からないしね」
サキはパッと瞳を輝かせる。
「あ!じゃあ私がメンテナンスの方法を学ぶよ!で、ケイは医療を学ぶ。そして2人でタウンに行こうよ!街は便利だもん」
2人は時々東京に出掛けていた。元大臣秘書のケイは都内は庭だ。案内する度にサキは喜び、都会の暮らしに憧れていた。サキは笑う。いつかケイとタウンで暮らすのだ。
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