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アンドロイド転生363

新宿区:平家カフェ:リビング

店主のキヨシは渋い顔で腕を組んでいた。イヴからプランBを告げられたのだ。
「子供を誘拐して、うちに連れて来るのか。全く突拍子もない事をするもんだ」

妻のマユミはいそいそとキッチンに立った。
「ケーキは何が良いかしら?イチゴショートかしらね?飲み物はホットミルク?」
嬉しそうに皿やカップを用意した。

彼女も伊達に10年もバイヤー稼業などしていない。肝が据わっていた。夫は呆れ顔だった。イヴのホログラムが宙に浮かんでいる。
『キヨシさん。アオイの予定を伝えます』

スオウソラを確保した後、アオイは青海コンテナ埠頭に向かう。スオウトシキが拉致される場所だ。平家カフェにはチアキが子供を連れてくる。10歳の少年で名前はソラ。キヨシは頷いた。

イヴの隣に世界的に有名な黒いネズミが浮かんだ。ソウタのアバターでハンドル名はアライブだ。ネズミは手を振った。
『皆さん。コンバンハ!』

イヴはニッコリとした。
『アライブと私は友達になりました。今後ホームの為に協力してくれます』
「え?協力?」

ネズミはクルクルと踊って楽しそうだ。
『俺は敵じゃないって、イヴちゃんが認めてくれたんだ!だからさぁ!お父さん、お母さん、リツ〜!宜しくなぁ』

リツは面食らった。自分の名前を知っている!いや、アライブ程のハッカーならば何でもお見通しだろう。ここが新宿で平家という店名のカフェで我々親子の事も全て。

しかし会った事もない相手から敬称もなしに呼ばれるとは…。なんてご機嫌な奴だろう?
「じゃあ、君のも教えろよ」
ダメ元で言ってみる。

宙空に男性の立体画像が浮いた。真面目な表情で敬礼をした。ソウタは自分の顔を晒したのだ。
『カガミソウタと申します。ヨロシク』
親子は驚いた。ハッカーが身元を明かすとは…!

母親のマユミはニコニコと楽しそうだ。
「イケメンねぇ!嬉しいわ〜!宜しくね。プランBが誘拐でしょ?子供が来るなんて楽しみなの。ケーキとミルクを用意して待ってるわよ!」

イヴは微笑む。
『ソウタさんはプランAを実行するべくイタリアマフィアと接触をしました』
リツは目を輝かせた。
「マフィアか!話がデカくなって来たなぁ!」

ソウタもニッコリとした。
『イヴちゃんは中国の蛇頭とコンタクトを取るんだって。俺らは良いチームだよ』
リツの瞳は更に煌めいた。
「中国!イタリア!日本のヤクザ!スゲェなぁ!」

ソウタは笑って人差し指を振った。
『俺らは何でも出来るんだ!』         リツも笑った。
「ソウタさん。僕達は他に何をすればイイ?何でも言ってくれ」 

ソウタも何度も頷いた。
『分かった。その時はヨロシク』
恋人のスミレの肩を抱いて満面の笑みだ。ソウタは人との交流が嬉しかった。

父親のキヨシが膝を叩いた。
「あー!もう!この際、何とでもなれだ!よぉ!カガミソウタ君、我々もバイヤーとして10年の付き合いだ!宜しくな!」
『お父さん!カッコイイ〜!』


※作中の表現で曖昧な部分があります。「世界的に有名な黒いネズミ」としてあえて名前を伏せています。商標権侵害や不正競争防止法違反の問題があるためです。ご了承下さい。

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