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アンドロイド転生483

2118年3月11日
茨城県白水村:リペア室

アンドロイドの修理人のキリと従兄弟のリョウが寝台に横たわるアンドロイドの頸を押して電源を入れた。女性型の25歳クラス、美しい東洋人モデルの目が開いた。

キリが顔を覗き込んだ。
「おはよう。ミオ」
ミオは目を瞬かせた。
「あ、キリ…。あ、リョウ…」

キリの瞳は煌めく。
「埠頭から帰って来て3日目の朝だよ。身体を換えたよ。ミオは大人になったよ」
「え!ホントに?」

キリはニッコリとする。
「起きて。鏡を見て」
ミオは起き上がると自分の目の前に浮かぶ等身大の鏡を見た。身体が自然に前屈みになった。

ミオの手がゆっくりと持ち上がり頬に触れた。鏡の自分を食い入るように見つめた。溜息をつく。
「こ、これが…私?」
キリは力強く頷いた。

ミオは自分を見下ろし胸の膨らみを見た。ついで、長い脚、長い腕に目を走らせ手をゆっくりと身体に這わせた。自分を包むように腕を巻きつけ、再度上目遣いに鏡を見る。

キリは微笑んだ。
「どう?気に入った?前のミオの面影を活かしたつもり。成長したみたいでしょ?」
ミオは鏡を見つめ、ゆっくりと頷いた。

そう。少女の頃の面影を宿していた。まるで成長したかのように見える。ミオは人間に憧れており、成熟する事を夢見ていた。想像以上の仕上がりに感激した。ああ。なんて綺麗なの?

ミオはクラブ夢幻の戦いで戦闘用マシンのレイラに勝利したものの身体を酷く損傷した。換えなければならない程だった。だがミオは喜んだ。14歳クラスから成人クラスを希望した。

ミオはかねてより、少女の身体である事が不満だった。大人の女性に憧れた。その夢が叶ったのである。ミオの口元が綻び、そっと囁いた。
「…有難う…凄く嬉しい…」

リョウが笑った。
「なんだよ?あまり嬉しそうじゃないなぁ」
ミオは勢い良く頭を振った。
「違うの。嬉しくて…呆然としているの」

キリも笑った。
「さぁ、立ってみて。歩いてみて」
「う、うん」
ミオはゆっくりと立ち上がり、歩き、そのうち室内をクルクルと回り出した。

ミオの顔が喜びに溢れた。
「有難う!キリ!有難う!リョウ!私…大人になれた!スゴイ!スゴイ!」
キリもリョウも何度も頷いて拍手した。

ミオの豊かな髪が揺れた。頬が艶やかに光った。長い手脚が宙に舞った。ミオは満足だった。少女から女性に変わったのだ。直ぐにでも恋人のルークと会いたかった。見せたかった。 

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