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アンドロイド転生4

2102年3月

「R2-320i。起きなさい」
アオイの瞼がカッと開かれた。真正面の女性の顔に驚いて飛び起きた。相手が慌てて避けた。もう少しで額同士がぶつかるところだった。

明るい光。真っ白な部屋。辺りを見回した。
「…ここはどこ?」
女性は軽く微笑んだ。
「ここはTEラボ。あなたは今生まれたの」

生まれた?たった今死んだと思ったのに?そうよ。煙になったじゃない。ああ。でも待って。さっき神様が命を与えてくれたんじゃなかった?そんな…まさか。本当に?嘘でしょう?

けれど私は生きているみたい。この人は私が見えいるんだもの。やっぱり死んでなかったの?それとも…死ぬ前に戻ったとか?だったら嬉しいけど…それよりもここは一体どこなの?

女性は手に小さな何かを握っていた。
「R2-320i。インストールするから首を出して」
「…R2…って…何ですか?」
「あなたの番号」

アオイは眉根を寄せる。
「番号…?」
「でもそのうち名前がつくんじゃない?派遣先で決めてくれるでしょ。さ、首をこっちに向けて」

女性はアオイの肩を引いた。何かを打たれたように感じたけれど、実際は頸の受信口にUSBメモリを差し込んだのだ。アオイは驚いた。
「やめて」

「あー、触らないで。すぐ終わるから」
ものの10秒。正確には10.115…秒で終わった。アオイの内なる声が時間を正確に計る。
「何をしたんですか?」

「派遣先には女の子のベビーがいるから、その仕様を覚えなくちゃならないの」
「派遣?」
「そう」

派遣先?ベビー?仕様?さっぱり意味が分からない。だが内なる声が“子育てマニュアル“だと知らせてくれる。新生児から乳児、幼児、少女まで。これは一体何…?

アオイは勢い込んだ。
「ここはどこですか?あなたはどなたですか?私はどうなったのでしょうか?」
育ちの良さが言葉に表れた。  

「私はキサラギ。出荷担当。あなたはどうもなっていない。完璧よ」
「完璧ってどう言うことでしょうか?」 
「起動した。スタートはオッケーってこと」

アオイは益々眉間に皺を寄せる。
「起動?」
「そう。まぁ…後はちゃんとルームでテストを受けてクリアしてからね。2日間やるからね」

「テスト?なんの?」
「これから教える。それにしても珍しいなぁ。こんなに疑問をぶつけてくるなんて。さ、立って」
「は、はい」

私は一体どうなったの?この人は何なの?ラボだとかインストールだとか…。テスト…。相手は日本語を話しているのに理解が出来ない。アオイは疑問と不安で泣きそうになった。


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