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アンドロイド転生566

渋谷区フェスの会場:休憩所

リツとアリスの目の前にはルイを始めホームの2人の少年とエリカ。そしてタウンの少女達。 4人はこっそりと茨城県の集落を抜け出し渋谷にやって来たのだ。バッタリと出会した。

リツはチラリとルイとモネを見る。恋人同士は手を繋いでいるもののルイはすっかり意気消沈していた。顔に覇気がない。まさか俺達に遭遇するとは思いもしなかったのだろう。

リツは少年達の気持ちがよく理解出来た。閉鎖的な集落から抜け出し、刺激の多い都会で楽しみたい。若い好奇心だ。その橋渡しをエリカが担っていたのだ。さて…どうしたものか。

エリカが一歩前に出た。
「リツ!お願い!今回は見逃して。楽しいフェスなんだよ?冒険を楽しませてあげてよ」
「分かるけど…ごめんな」

ホームとタウンの確執は深い。69年前にタウンの輩が集落を襲ったのだ。戦いの末、20名の人命が奪われた。少数民族の恨みは大きく元々距離があるのに線引きは益々濃くなった。

リツは少年達とエリカを見つめた。
「僕は大人なんだ。ホームの人達の信念を分かっているつもりだ。君達は冒険を楽しんだかもしれないけれど、夢は終わったんだよ」

エリカの顔は怒りに燃えていた。
「リツ!もしアリスとの仲を邪魔されたら?マシンと恋愛しちゃダメだって言われたらどうするの?諦めるの?ねぇ?答えて!」

ルイはエリカの加勢が嬉しかった。
「そ、そうだよ。イイじゃん。別に。大人達の喧嘩に子供を巻き込むなってんだよ」
カナタもヤマトも何度も頷いた。

リツは溜息をついた。
「だから言ったろう。僕は良いのか悪いのか判断は出来ないって。でも…誰かを好きになる気持ちは…理解が出来る。だから提案だ」

リツはスマートリングを見て時刻を確認する。
「今は2時だ。5時になったらもう一度ここに集まる。それまで自由行動だ。その後は新宿の僕のうちに行く。そして君らをホームに送る」

アリスがエリカに顔を向ける。
「エリカ。リツの最大の譲歩だよ。フェスを楽しんで。そして皆んなでホームに帰ろう。正直に打ち明けよう。ね?そうしよう」

エリカは地面を見ながら悔しそうな顔をしていたが、観念して微かに頷いた。
「ルイ。カナタ。ヤマト。そういうことになった。大冒険はバッドエンドかな」

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