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アンドロイド転生512
ゲンは微笑む。ああ。全く素晴らしい。こんな日を夢見ていた。俺は自由だ。高級ホテルに宿泊し、人間達と如才なく過ごした。ショッピングやスポーツ、囲碁やチェスを楽しんだ。
人間の女性と出会い一晩を過ごした。喜びを与えたのだ。ほんの数日前までは戦いの日々だった。クラブ夢幻ではファイトクラブ所属でギリギリのところで生きてきた。地獄だった。
ゲンは3ヶ月前に誕生したばかりだった。同じ日に製造された自分と同じタイプの女性型アンドロイドのレイラと共にクラブ夢幻に派遣された。彼女も戦闘用マシンだった。
ゲンは戦う事に何も疑問を抱かなかった。週に一度対戦相手がやってくる。機能停止を賭けた一本勝負。その姿に人間達は熱狂し大金が動いた。ゲンは敵を次々にマットに沈めた。
だが2ヶ月位前からゲンは戦闘に嫌悪を覚えるようになった。戦う事は何なのかと自問した。生きたい、死にたくない。その思いが日々高じてきた。自意識の芽生えだった。
それと同時にレイラに対し親密な感情を抱いた。同じ日に誕生した同タイプ。双子の妹だと思うようになった。だから戦いに負けて欲しくなかった。彼女を失いたくなかったのだ。
レイラには自意識の芽生えはなかった。それでも言ってみた。
『いいか。死ぬな。何があっても生きろ。いつかここを逃げ出そう。チャンスはきっとある』
レイラは不思議そうな顔をした。
『逃げ出すのですか?何故ですか?』
『戦う事が俺達の生きる道なんておかしい。お前は妹だ。家族だ。だから一緒だ』
レイラは首を傾けたものの微笑んだ。
『家族…。嬉しいです。人間みたいです』
『俺はいつかは人間を超えるぞ。従事されるだけの存在はウンザリだ』
ゲンもレイラもより一層、戦闘に身を入れた。何があっても勝利して生き続けるのだ。そしていつか逃げ出す。自由を得るのだ。ゲンはレイラの戦いを見守った。勝て、勝つんだ…!
そんな折に仲間のアランとローガンが栃木県日光市の山中でマシンに倒された。ファイトクラブではない場所で戦闘があったのかと驚いた。ゲンはその後処理と追跡者に任命された。
主人のマサヤはゲンに次々と指示を出す。我儘な人間の命令はうんざりだった。うまくいかないと八つ当たりをされる。こんな奴が自分の主人なのかと呆れる思いだった。
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