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アンドロイド転生333

白水村:食堂

タケルは輪廻転生を打ち明け、人間を倒せると豪語した。並々ならぬ決意があった。
「ヤクザは俺達を許さない。ホームが潰される。その前に俺が潰す。行くのは誰だ?」 

ルークの瞳がギラリと光った。
「俺が行く」
「私も行く」
エリカとチアキの声が重なった。

次々とアンドロイドから声が上がった。黙っていたのはアオイとサツキだけだった。サツキは柔術をインストールしていない。戦力外だと本人自身が分かっている。ただそれだけだ。

だがアオイは違った。恐れていた。トワの焼けた顔が頭から離れない。自分が死んだ時も思い出された。暴走車に跳ね飛ばされてその命は儚く散った。私は…死ぬのが怖い。死にたくない。

アオイは仲間達を見渡した。その瞳には一寸の揺らぎもなかった。死ぬかもしれないなどとは思っていない様子だ。そんな馬鹿な…。その自信はどこから来るの?勝てると思うの?本当に?

いくら柔術が出来るとはいえ、敵はファイトクラブの猛者なのだ。トワの二の舞になるのでは…。アオイは不安でならなかった。やめてくれと言いたくなり息を吸い込んだ。と同時にキリが発した。

「待って。私が戦闘用アンドロイドを造る。その為にずっと回収してたんだ。いつかこんな日が来るかもしれないって予感があったのかもね。あんた達は…家族だよ。失いたくない」

キリは父親を見つめた。
「父さん、それで良いね?」
村長は険しい顔をしていた。認めたようにも思惑があるようにも見えた。

父の暗黙を了解したとみなしてキリは立ち上がった。リョウを見下ろした。
「早速やるよ。行こう」
リョウは膝を打って頷いた。

アオイはホッとした。これで皆んなは大丈夫だ。新たに造られるアンドロイドには申し訳ないけれど戦士だと思うことにしよう。隣のサツキを見やると彼女も納得したように頷いた。

その後、全員が協力してTEラボから回収した廃棄用アンドロイドの身体を倉庫からリペア室に運んだ。キリとリョウが先頭に立ち戦闘マシンを製造し始めた。バラバラの肢体が形造られていく。

誰もが村を守るのだと言う目的で一丸となった。時には目や口元に力を宿し、時には同志の笑みを浮かべた。1日でも早く事を成し敵を倒す。皆が血の繋がった親戚という結束力は大きかった。

僅か2日間で10体のアンドロイドを造り上げた。直ぐに柔術をインストールし、訓練を開始した。10体のアンドロイドには自意識の芽生えはなく、戦闘用マシンとして実技を学んでいった。

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