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アンドロイド転生364

東京都葛飾区:カガミソウタの邸宅

ソウタはホログラムのイヴを見上げた。
「えーと…。ルークは夢幻に。タケルはスオウの家に。アオイはソラのマンションに。皆んな其々動いてるねぇ。燃えてるねぇ」

イヴはニッコリとした。
『はい。皆さん信念がありますね。ところでドウガミ親子は喜んでいましたね。ソウタさんが身元を明かしてくれたのが嬉しかったのでしょうね』

平家カフェのドウガミ親子とネット上で対面を済ませたソウタは満足の笑みを浮かべた。ハッカーとして影の世界にいたソウタが初めて顔を晒した相手だった。後悔していなかった。

ソウタは眉根を下げた。
「まぁ…俺がターゲットをヤクザに選んだのがミスったからなぁ。何でもしますよ。はい」
スミレが慰めるようにソウタの頭を撫でた。

イヴは微笑む。優しい眼差しだった。
『そうやって、自らの失敗を反省し何事も努力する。素晴らしい事です。では引き続きイタリアの件は宜しくお願い致します』

「オッケー」
ソウタは親指を立てた。彼にはもう何の迷いもなかった。退屈な毎日から解き放たれて、やる気に溢れていた。元来危ない橋が好きなのだ。

イタリアマフィアのルチアーノ家のトップ、ジョゼフ・ルチアーノに初回の面会を拒否されている。ソウタはコンピュータの前で鼻息を荒くした。
「ジョゼフ君!俺様は諦めないぞ!」

ルチアーノ家とは因縁があった。ソウタはルチアーノ家の取引を壊した14年前を思い出す。あれは12月24日の深夜。イタリアのローマで闇の取引の為に爆弾を積んだ無人車が港に向かっていた。

ボディガードのアンドロイドが乗る車も前後にいた。その車両3台をソウタがハッキングし、運転を手中に収めた。道行を外れた車に驚いてルチアーノ家では直ぐに対応策を取った。

だがソウタの方が能力が上だった。イタリアのAIなど容易かった。車両の操作を元に戻せないままルチアーノの軍勢は呆然と見送るしかなかった。車が向かった先はローマ警察だった。

ソウタはクリスマスプレゼントとして警察に爆弾を届けたのだ。この一件は世界を席巻した。面白おかしくニュースにされた。爆弾を積んだ車に乗る神の子イエスが画像に作られ流布されたものだ。

ルチアーノ家が爆弾取引の大元だとは暴かれなかったものの、大金を産む取引が水に流れた。しかも世間の笑い物だ。逮捕されなかったから良かったと言うものではない。

この恨みは大きく何が何でもハッカーを見つけ出すとジョゼフは躍起になった。マフィアとしての誇りを賭けて復讐するのだ。コンピュータプロ集団がソウタを追った。

ソウタはまだ若く愚かだった。ソウタのアバターの世界的に有名な黒いネズミのキャラクターをネット上に登場させて自分が犯人だと自慢げに語った。敵を煽り小馬鹿にしたのだ。

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