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アンドロイド転生841

2118年7月31日 AM0:55
東京都葛飾区

行方不明のアンドロイド。ソウタの恋人のスミレは亀有公園の池の中に沈んでいた。首を折られて機能停止(死)になったのだ。折った相手はアンドロイドのゲンだ。

ゲンはエムウェイブ(アンドロイド制御装置)をターゲットに照射して4肢の自由を奪い、機能停止になるまで相手を襲い最後は池に放り込むのだ。マシンは重い。浮かばない。

スミレは23番目の犠牲者だった。ゲンは東京23区のひとつずつ、ひとりずつ犯行を行なった。都内に800万体いるマシンの22体が行方不明になろうとも問題になる事はなかった。

ソウタはスミレの行方と安否が心配でならず、風邪で高熱であっても探し出す気概だった。友人のリツ達が協力を申し出たが発見出来なかった。諦めてソウタの家にやって来た。

最後の頼みの綱はイヴだ。イヴは人工衛星をハッキングしてスミレの信号が途絶える少し前からの彼女の履歴を探った。いつものように冷静で美しい顔を歪める事もなく淡々と語り始めた。

『スミレさんはアンドロイドと共に亀有公園にやって来ました。音声は捉えられないので唇の動きを読みました。子供が泣いており、ナニーがいないので探して欲しいと言われたのです』

イヴは顔色ひとつ変えない。
『アンドロイドはスミレさんに何かを向けました。直ぐに倒れました。そして4肢を折りました』
4肢を?折った?一同は驚愕した。

『その後は凡ゆる方法でスミレさんを傷つけています。腕を肩から抜きました。脚を千切りました。上半身と下半身を切り離しました。最後に首を折って捻って切り落としたのです』

「やめてくれーーーー!!!」
ソウタの声が裏返った。ベッドから飛び出すと扉に向かった。直ぐにチアキが動いた。扉に駆け寄るとソウタの行く手を阻んだ。

「どけ!」
チアキはドアの前で腕を広げた。
「どかない!公園に行くんでしょ⁈ダメよ!悪化する!死ぬよ!!」

リツもソウタに駆け寄った。
「そうだ。ダメだ!死ぬ!」
ソウタは鬼の形相だった。
「死んでもいい!」

イヴは淡々と続けた。
『スミレさんは池に捨てられました。ああ。だから人工衛星カメラは現在の様子が分からないのですね。真っ暗な水の底ですから』

ソウタは咆哮を上げるとチアキに掴み掛かった。だが強靭なアンドロイドはびくともしない。真っ直ぐにソウタを見上げている。
「どけ!どけ!」

リツはソウタの肩を掴んだ。
「スミレを連れて来る!待っててくれ!」
「嫌だ!ダメだ!俺が行く!」
「頼む。ソウタさん、待っててくれ!」

ソウタは激しく咳き込んだ。立っていられず崩れ落ちた。アリスが駆け寄る。ソウタの瞳から涙が吹き出す。彼はスミレの名前を呟いた。何度も首を振って嫌だと言って泣き出した。

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