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アンドロイド転生575

東京都新宿区:平家カフェ

高い吹き抜け。広い店内は白が基調。観葉植物が瑞々しい。クラシックの調べ。カナタとヤマトはカフェと言うものを初めて見て驚きに目を見張った。ルイは一度訪れた事がある。

午後6時。夕食時にはまだ少し早く、ティータイムの時間は終わった。客はまばらだ。店主でリツの父親のドウガミキヨシがカウンターから出てきて満面の笑みを見せた。

客の邪魔にならないように小声になる。
「よう。坊主達。フェスは楽しかったか?」 
「は、はい…」
3人はおどおどと頷いた。

確かにフェスは楽しかった。リツ達とバッタリと出会う前までは。
「リツに会ったのが運の尽きだったか?」
まるでお見通しで少年達は言葉に詰まった。

アリスが微笑む。やはり小声になる。
「キヨシさんはリツのお父さん。ホームの親戚だよ。ここはご飯や飲み物やケーキなどを出すところ。カフェの名前は平家って言うの」

「平家!」
少年達は嬉しくなった。自分達は平家の落人の子孫なのだ。掟に反抗しつつも、それでも生まれ育った村に誇りもあるのだ。

キヨシは少年達の頭をポンポンポンと叩いた。
「ルイとカナタとヤマト。赤ん坊の頃を知ってるぞ。ギャーギャー泣いて煩かったなぁ」
3人は顔を赤らめた。

「どうだ?ホームから抜け出してタウンに来た気持ちは?刺激的だろ?楽しかっただろ?良いんだ。坊主はそれ位元気な方が。村なんてどんどん出てきてしまえ。掟なんて気にするな」

リツは呆れた顔をした。
「父さん…焚き付けるなよ」 
少年達はキヨシに好感を持った。てっきり怒られるかと思っていたのに褒められたのだ。

リツの母親のマユミがニッコリとする。
「さぁ。あなた達。座りなさい。ご飯よ」
少年達の目の前にはカツカレーの大盛りが並べられた。食欲をそそる香りだ。

「いいか。遠慮するな。男なんだ。ガンガン食え。食後にはパフェを出してやる」
キヨシは微笑む。3人は顔を見合わせた。パフェなど聞いた事もない。一体何だろう…?

ルイ達が旺盛な食欲を見せる中、店内は混み始めた。店主夫婦とリツとアリスが忙しく動き回る。エリカも協力する。少年達は食事を終えると、自分の食器を片付けて手伝いを始めた。

ホームでは当たり前の事だ。誰もが協力をして働くのだ。幼い頃からそんな躾をされた彼らは自然に身体が動いた。キヨシは微笑んだ。
「悪いな!パフェは後でな!」

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