アンドロイド転生609
山間:斜面の下
仲間がホームからやって来た。まずは7機のドローンだった。ルイは顔を歪めた。
「モネが起きない!どうしよう!」
モネの顔に覆い被さり雪を遮っていた。
元精神科ナースだったアリスは医療の知識があった。アリスのドローンがルイの前に躍り出た。
『呼吸はきちんとしている?脈拍は正常?確認して!タオルを持ってる?顔だけでも拭いて!』
ルイはモネの顔に近付いて確認した。
「息はしてる!」
次に手首を握った。
「脈拍は…よく分かんないよ!」
ザイゼンが手のひらをモネの顔に翳した。顔に掛かる雪が遮られた。ルイはリュックからタオルを取り出してモネの顔を拭き始めた。彼の身体はガタガタと震えていた。寒さと恐怖だ。
アリスが叫んだ。
『気道を確保して!顔を横向きにして!』
ルイは慌てて頷いた。
「う、うん」
ルイがモネの顎に触れるとモネの瞼がピクピクと動いて開いた。ルイは叫んだ。
「だ、大丈夫か⁈」
「モネ様…!お気を確かに…」
モネの瞳は虚ろだ。宙空を彷徨い意思があるようには見えなかった。ルイは不安になった。
「アリス。あ、あのさ…さっき変だったんだ。関係ない事をブツブツ言ってた」
アリスの表情が強張った。
「まずい!それって低体温症の症状なの。身体は?震えてる?」
「震えてない。止まったんだ」
アリスは唇を噛んだ。
『震えていない方がより深刻なの。今直ぐ何とかしないと…』
「どうすればいい?…なぁ!」
アリスは何度も頷いた。
『直ぐにでもどこか…雪が遮られる場所に移動して、服を脱がして身体を拭いて温めるの。体温が下がるのを避けたいの。どこかある?』
「車があります…」
ザイゼンの声がか細い。頚椎を折り、声帯を損傷しているのだ。ルイは決意した。
「俺が運ぶ!俺がおぶる!」
エリカは首を振った。
『無理だよ…。こんな斜面を背負って登れないよ。タケルなら出来るから、待ってて』
「待ってたらモネはヤバい!」
先程もモネを背負って失敗したがやらずにはいられなかった。ルイはザイゼンに加勢してもらってモネを背負うとしたがモネは全く力が入らず叶わなかった。ルイは悔しそうな顔をした。
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