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アンドロイド転生308

新宿歌舞伎町:クラブ夢幻

スオウマサヤは父親が経営するファイトクラブにやって来た。非合法でアンドロイドを戦わせる場だ。いつの時代でも光があれば闇もある。暴力と金に人は浮かれるものなのだ。

「あら、マサヤさん。こんにちは」
女がいた。顔中にリングを嵌めている。唇を舐めた。舌にもリングが光る。父親の愛人のクレハだ。美人だがこの趣味は頂けない。

マサヤはクレハを毛嫌いしていた。気づかれぬように舌打ちをする。こんな女でも母親なのかと。リングだらけのキモい愛人とその息子…クソガキに2代目の座を奪われてなるものか。

マサヤは20歳も歳が離れている義弟にライバル心をむき出しにしており、兄弟愛など全くなかった。10歳の少年は可愛い盛りで父親は溺愛している。それも不服でならなかった。

クレハはにっこりとする。
「昼間からここに来て何の用事?」
お前こそ何やってるんだ?
「ちょっと親父から頼まれ事です」

「マサヤさんは頼りになるからねぇ」
「まぁね」
マサヤは胸を反らす。単純なのだ。
「じゃ、俺は地下に行くから」

マサヤが地下に行くとミヤザワが出迎えた。
「コイツらがスパイには向いてます」
「そうだな」
マサヤは2体を眺めた。

コイツらは難なくTEラボの不正者を見つけるだろう。ぶち殺したって構わないけどな。うちの資産を奪っておいてのうのうとしてるクソ野郎なんて生きてる意味がねぇ。

マサヤはスオウ会のいずれトップになる運命である。だが、2代目の浅はかさでその力には及ばなかった。影響力のある父親の庇護の元で権力の旨味を吸っていただけだ。

父親に自分の力を認めてもらいたかった。関東一円を束ねる重鎮の息子として部下達にも一目置かれたい。本当は弱い心を奮い立たせていた。今回の件を守備良くやって認めてもらうのだ。

マサヤは30歳で独身だ。妻子など欲しくなかった。そんな責任など負いたくないのだ。性格も悪く度胸もないマサヤのひとつ良いところは容姿だけだった。女達は挙ってマサヤに近付いた。

マサヤも服を着替えるように女を替えていた。女達も裕福なマサヤを利用しているだけだ。表向きの家業の建設会社では専務の役職。何もしませんむという語呂があるように大して仕事もない。

そしてファイトクラブを運営する力量もない。自分でも能力がない事に薄々気がついている。だがここでやり遂げる。我が家の資産を取り戻す。いや、倍にして返して貰う。

アンドロイドに盗みをさせている人間どもをとっ捕まえたらどうしてくれようか。マサヤはサディスティックな笑みを浮かべた。
「よし。お前ら。俺が主人だ」

※クレハの登場シーンです


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