見出し画像

アンドロイド転生941

2118年12月24日 夜
シオンの邸宅 温室にて

シオンは自宅のパーティのホストの一員として社交的に振る舞っていたが疲れてしまった。ひと休みをしていると参加者の中年男性がシオンに温室を案内して欲しいと言ってきた。

ダンディな姿にシオンはイケオジだなと思う。気軽に応じたものの、温室にやって来ると相手は思わぬ事を言い出した。シオンの性癖を指摘したのだ。シオンはオロオロとなる。

どう答えて良いか分からず俯くシオンの顎にイケオジは触れた。顔を上げさせる。
「キスしたいな。していいかな?」
「えっ!」

「ゲイの事を秘密にしてあげるから。な?1回だけでいいからさ?キスさせてくれよ」
シオンの唇がワナワナと震えた。キ…キスだと?な、なんだ。このクソオヤジ。

「キモ…」
イケオジは全く怯まない。それどころか笑っている。その余裕振りが不気味だ。
「キモい?そう?俺ってイケてないかな」 

イケオジの瞳は豹のようだ。シオンはその目に見つめれて動けなかった。するとイケオジの顔が近付いて来た。やめてくれ!シオンは手を振り払った。誰がするか。馬鹿野郎。

歩き出したシオンの背にイケオジは放った。
「君が好きなのは…誰かなぁ…。カノミドウ家のトウマ君かなぁ」
シオンは立ち止まって振り返る。

「ああ。やっぱりそうだ。トウマ君はカッコいいからねぇ。惚れるよねぇ」
シオンの頬が強張った。心臓が掴まれたように痛い。不安感でいっぱいになった。

イケオジはニヤニヤとしている。
「夏にさ?君のお披露目で初めてパーティに参加したろ?僕は君から目が離せなかった。そして君は…ずっとトウマ君を見ていた」

シオンの身体が震えた。そんなに自分はトウマを見ていたのか。そして何もかも分かってしまうものなのか。どうしよう。どうしよう…。イケオジはシオンの様子にニンマリとする。

「恋心ってのは止められないからね。抗おうとしても態度に出てしまうものだよ。君はまだ若いからね。いや…青いとも言う。バレバレってことさ。さて…どうする?」

「どうするって…」
「僕はカノミドウ家とも懇意にしているんだ。トウマ君を小さい頃から知っている。君の恋心を彼に伝えてあげようか?」

シオンは慌てた。それは困る。
「やめて下さい…!」
「あそう。じゃあ…やめておくよ。僕は別に君を虐めたい訳じゃないからね」

シオンは下唇を噛み締めた。イケオジは目を輝かせた。今度はシオンの頬に触れた。
「いいねぇ。その顔。堪らないよ」
シオンの全身に鳥肌が立つ。

「キスしようよ。そっと触れるだけだよ」
シオンは理解した。これは脅迫だ。キスをしなければトウマにバラすと言うことだ。トウマには絶対に知られたくない。キモいと思われる。

シオンの瞳が泳いだ。知能が高い彼なのだ。何とか回避の方法を見つけたい。だが所詮は17歳。世間知らずの子供なのだ。相手に敵わなかった。イケオジの顔がシオンに近付いた。


※シオンのお披露目パーティのシーンです


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?