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アンドロイド転生517

ホテルのプールにて

リツの顔が怒りに燃えた。
「諦めろだと?納得するか!おい!何とかしろ!」
ヒカリが呆れた顔をした。
「命令したり頼んだり怒ったり忙しいね」

リツはヒカリを睨んだ。
「あんたは黙っててくれ。関係ないだろ」
「何よ?その言い草。ゲン、行こ!」
ヒカリは立ち上がってゲンを引っ張った。

ゲンも立ち上がる。リツは慌てた。ゲンがこの場から去ってしまったらミオを助ける手立てがなくなってしまうのだ。
「おい!待ってくれ!頼む!助けてくれ!」

ゲンは溜息をついた。
「私はレイラを失ったんです。もう2度と会えません。その悲しみは大きいです」
「だからって復讐なんてしなくていいだろ?」

リツは回り込んでゲンを見つめた。
「復讐が馬鹿らしい事は今回のスオウの一件で学んだだろ?奴は連行されたぞ?」
「私が学んだのは自由と世界の広さです」

ヒカリがゲンの腕に腕を絡めた。
「早く行こ〜。うちに行こ〜」
歩き出したゲンの腕をリツは掴もうとしたが、するりと避けられてしまった。

リツは宙空に腕が彷徨い、不安定になった身体はよろけて倒れ込んでしまった。ヒカリがその様を見て笑った。側で見守っていたフロントアンドロイドが驚いてリツに駆け寄った。

ゲンは平然としていた。
「反撃を出来ない私ですが、避ける事は出来ます。人間様、私に手出しをする時は充分にお気を付け下さいませ」

ゲンは微笑み、ヒカリは意地悪そうに笑った。2人は立ち去ろうとした。リツは焦っていた。ゲンが逃げてしまう。このままではミオは…!
「待て!待ってくれ!」

ゲンとリツとの間にヒカリが割り込んだ。
「あんたシツコイ!」
リツは叫んだ。
「家族の命が掛かっているんだ!」

ヒカリはゲンを振り返った。
「ゲン。行って。着替えてて。私が話をする」 
ゲンは勝ち誇ったようにリツを見て更衣室に歩いて行く。リツは焦った。逃げられる!

リツは叫んだ。
「君もニュージェネレーションだろ?俺もそうだ。アンドロイドは恋人で家族なんだ!助けたいんだ!分かるだろ?」

ヒカリの瞳が自信ありげに光った。
「ジェネじゃない。私はマジョリティよ」
マジョリティとは人間の男女もアンドロイドも恋の対象という類の人間の事だ。

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