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アンドロイド転生456

2119年2月某日 午前4時
新宿区:平家カフェ 住居用リビング

リビングに歓声が響き渡った。ソラとリツはホットミルクを飲みながらゲームをしている。ソラはバトル系のゲームが好きだと言ったが、平和な日本では暴力を謳ったジャンルはない。

選んだゲームは可愛い動物のキャラクターが街を作るという物だった。より良い街づくりをした者が勝利する。リツは子供相手でも甘やかす事なく真剣にゲームに取り組んだ。

それがソラには嬉しかった。2人は笑みを浮かべて立体画像のプレイに没頭していた。ソラはリツにすっかり懐いて大喜びだ。瞳が煌めく。リビングは花が咲いたようだ。

ソラに義兄のマサヤはいるが疎遠だった。マサヤにしてみればソラは愛人の息子だ。愛情などなかった。父親のスオウの願い…兄弟仲睦まじくというのは叶わなかった。

リツの母親のマユミは甲高い子供の声が嬉しくてならなかった。いつか孫でも出来たらこんな声が聞こえるのかしら…。とふと思う。だが頭を振った。息子はアンドロイドのアリスと恋仲だ。

2人は余程相性が良いのだろう。長続きしている。マユミはアリスの事を認めていた。マシンと恋愛したって良いじゃないか。だが29歳になる息子の将来を少しは案じた。

マユミは宙空を見上げた。イヴは何も言わない。青海埠頭ではどんな展開になっているのか。本当にソラを脅迫の道具に使うのだろうか。願わくばプランAで解決して欲しい。

甲高い声が途切れた。マユミが振り向くとソラは宙に手を浮かせたままホログラムのパネルの前で目を瞑り、舟を漕いでいた。リツと目が合う。互いに唇に人差し指を当てた。

ふと見ると夫もユラユラとしている。時刻はもう明け方の4時だ。2人とも限界なのだろう。リツはソラを抱き上げた。ソラは目覚める事はなかった。ナニーのメグも立ち上がった。

リツはメグに顔を向けた。
「客間にベッドがある。寝かせよう」
「はい。私もお供します」
リツ達はリビングを出て行った。

マユミは夫の肩を叩いて囁いた。
「お父さん、寝るならベッド…!」
キヨシは片目を開いた。
「…プランはどうなった…?」

マユミは首を振る。
「まだ何も連絡がないの」
「ベッドになど行ってられん」
そう言いつつもキヨシの目は閉じた。

夫にブランケットを掛けて宙空を見上げた。
「イヴ、埠頭ではどうなったの?」
『プランBを発動する事になりそうです』
マユミは残念そうに溜息をついた。

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