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アンドロイド転生630

エリカはリペア室から出て廊下を歩く。顔には不満が現れていた。リョウはアオイを目覚めさせてしまった。すぐにモネの遭難騒ぎを知るだろう。2人は喜びの再会を果たすに違いない。

「くそっ!畜生!ムカつく!」
エリカはアオイが嫌いだった。憎んでいると言っても良い。だから幸せになって欲しくない。アオイの喜ぶ顔など見たくないのだ。

アオイが育てたモネとルイが偶然にも出会い、恋をした。エリカは彼らを応援する振りをして実は破局させるのが目的だった。モネの苦悩がアオイの悲しみになれば良かった。

それなのに上手くいかなかった。エリカはアオイやモネの強運に慄く。人間とはどうして運に恵まれるのだろう?アオイは断崖から落ちたのに助かった。モネは遭難したのに助かった。

アオイにはその他にも幸運が訪れた。友人のサツキを廃棄の運命から救ったのだ。私がラボに密告したにも関わらず、意気揚々と村に連れて来た。いつも自分の画策は上手くいかない。

サツキは自我がないアンドロイド。いや…機械の塊…ロボットだとエリカはサツキを見下し、元人間のアオイを恐れている。自分より高い次元にいるのだと心の奥で認めているのだ。

エリカは自意識が芽生えた。自分にも何か特別なものが欲しかった。だからタケルとの出会いに運命を見出した。タケルが元人間であるという事も依存心に拍車を掛けたのだ。

エリカは唇を噛む。ああ。タケルに宣言されてしまった。私を異性として愛さないと。妹としか感じられないと。どうして?どうして家族なの?なぜ女性として見てはくれないの?

でもアリスが言うように、妹と思っていてもいつしか愛するようになる…?タケルの心は変わる…?ならば私はいつまでも待つ。いくらでも時間はある。アンドロイドなのだから。

アオイとサツキがバタバタと走り、エリカを追い抜いた。エリカはイヴに通信した。
「アオイ達はどうしたの?」
『モネの遭難の一件を聞いたのです』

エリカは舌打ちをした。
「それで?」
『アオイとサツキがモネの入院している病院に行くそうです』

エリカは顔を歪めた。
「ふん。面白くない」
結局アオイとモネは再会するのか。何の為にリョウを脅し、アリスを丸め込んだのだ。

『あなたがどんなに画策をしようとも、運命とは必然的に流れていくものですね』
エリカの怒りは頂点に達した。何もかも不服でならなかった。いつかそれを壊してやる…!

イヴは微笑む。
『タカオとキリが麓に到着します。タケルが迎えに行き、病院に向かいます。さて…ルイとモネの運命の女神は微笑むのでしょうか』


※エリカがサツキを攻撃するシーンです


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