アンドロイド転生661
東京都目黒区:ハスミエマの住居
好奇と興味で若い男達がやって来ては望みが叶わないと知って諦めて帰り、また新たにやって来た。タケルが渋るエマを説得し執事が警察に通報した。人々の訪れは漸く減った。
だが警察官は事情聴取の為にエマの全てを知る事になる。恥の上塗りをされているようで彼女の心は益々傷んだ。深夜を過ぎて騒ぎを知った友人のオクザワヒカリが連絡をして来た。
『エマ⁈ビックリしたの!どう言う事⁈』
「わ、分からないの…。どうしてなのか」
エマは首を振って泣いた。ソファで膝を抱え小さくなって座り込んでいた。
「ヒカリ…。どうしよう…。外に出れない…。私はもう終わったんだ…」
エマの声は震え、涙が頬を伝った。タケルがエマの背に手を当てて優しく撫でた。
ヒカリは悲しげな顔をした。同じ立場なら同じように思うだろう。性に奔放とはいえ羞恥心はあるのだ。淫らな姿が暴かれて嬉しいわけがない。事態が終息するのを待つ他はないだろう。
「エマ…。辛い気持ちはよく分かる。ううん…全部は分からないけど…理解したい。私は何があっても味方だからね。絶対ね」
エマは小さく頷いた。
ヒカリはタケルを見た。
『エマの側にいて。力になってあげて』
タケルは力強く頷いた。
「分かった」
執事アンドロイドのコイズミがやって来た。
「エマ様。ホットミルクです。落ち着きます」
エマはハラハラと涙を零し顔も上げなかった。タケルが代わりに受け取った。
エマの手にマッグカップを握らせる。エマはミルクを見つめ、ゆっくりと飲み出した。
「タケルさん…。私はもうダメかも…」
「噂など直ぐに消えます。僕がついています」
2時間後。エマは泣き疲れて眠ってしまった。タケルはエマを抱き上げると寝室に運んだ。寝顔はあどけなかった。せめて眠っている間だけでも心安らかになって欲しかった。
タケルはイヴに通信する。
「エマを陥れた奴を調べて欲しい」
『知ってどうするのですか?』
「復讐する…!」
イヴは困った顔をした。
『復讐はお勧め出来ませんね』
「こんなに苦しんでいるんだ。許せない」
『他にも苦しんでいる者がいますよ』
タケルは眉根を寄せた。
「どう言う意味だ?」
『あなたを好いているのはエマだけではないという事です。分かっているでしょう?』
タケルは頷く。エリカだ…。エリカが苦しむ?ああ、確かにエリカには恋愛対象じゃないと宣言した。泣いていた。そうか。苦しんでいるか…。でも彼女の想いには応えられない。
タケルは思いつかなかった。まさかエリカがドローンで自分を追ってエマとの事が知られたとは。だからエリカがエマを追い詰めたとは考えもしなかったのだ。甘かった。
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