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アンドロイド転生634
メディカルセンター:待合室
10時半。オペ室の扉が静かに開いた。医師アンドロイドが待合室にやって来た。サクラコは慌てて立ち上がった。タカオ達も腰を浮かせた。ルイは不安気に医師をじっと見つめた。
医師は満足そうに微笑んでいる。
「オペは成功です。靭帯に及んでいなかったのが幸いでした。4ヶ月間のリハビリで完全回復します。保証します」
サクラコは胸元に両手を当てて深く息を吸い込んだ。みるみるうちに瞳に涙が溜まった。
「あ…有難う…」
ルイも両親と顔を見合わせ安堵した。
医師アンドロイドはにこやかだ。
「容態が安定していますのでICUではなくて一般病棟に移ります。個室で宜しいですか?」
「ええ。結構よ」
間もなくオペ室から自走ベッドが出て来て待合室の前で止まった。点滴のパックが揺れていた。サクラコがベッドに走り寄った。モネは眠っている。母親の眼差しは慈愛と安堵に満ちていた。
ナースアンドロイドが微笑む。
「鎮痛剤と抗生物質を投与しています。麻酔の効果は間も無く消えて目覚めます」
「ええ」
ベッドはナースを追尾して行く。サクラコは追って行った。その後をルイ達もついて行く。4人の緊張感も和らいでいた。オペは成功したのだ。リハビリで完全回復するのだ。
個室にベッドが入って定位置に収まった。広々とした清潔な室内。心安らぐ香りが漂っていた。ナースが振り返って宣言する。
「病室内はお身内の方だけです」
ルイは口元を一文字にする。そうか。自分は入れないのか。病院は色々と決まりがあるんだよな。親族でなければ患者の様子も経過も教えてくれない。それがルールらしい。
サクラコが病室内に消えていき、扉は閉ざされた。親子3人は廊下に設置されているベンチに座った。後はモネの目覚めを待つだけだ。3人は暫く無言だった。ルイは両親の様子を窺った。
タカオは腕を組んで目を瞑っていた。何も言うつもりはないようだ。キリは息子を見やった。
「モネさんは携帯を貸してくれたんだってね」
「…うん」
キリは息子の指を見てスマートリングが嵌っている事を確認した。恋をする2人は何が何でも連絡を取りたかったのだ。その気持ちは痛い程よく分かった。自分だって昔は恋をしたのだ。
キリは続けた。
「エリカがタウンにこっそり連れて行ってくれたんだって?4回も」
「…うん」
息子の短い返事はいつもの事だ。
「そっか…。好きなんだね。モネさんの事が」
それにはルイは応えなかった。思春期の少年らしく親とは少し距離があった。
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