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アンドロイド転生451

青海埠頭

アオイはタケルを見上げた。
「ねぇ?戦いなんてもうやめて。人を殺すなんて馬鹿な事はしないで。お願い。プランABは知ってるでしょ?完成したよ?」

タケルは溜息をついた。
「お前だってスオウの残忍さを知ってるだろ?散々アンドロイドを虐げてきたんだ」
「あの人だって資産を奪われて恨んでる」

タケルは憤る。
「資産と一緒にするな!トワが死んだんだ!」
アオイも負けずに叫ぶ。
「だからって復讐をしてもトワは戻らない!」

アオイは必死だった。
「お互い様なんだよ。人を殺してはダメ!一線を越えちゃダメ!あなたは殺人者じゃない!」
タケルは黙り込んだ。両者に無言の時が流れた。

アオイはコンテナから顔を出した。
「誰もいない…」
埠頭は静寂に包まれている。
「ドローンで探すね」

チアキから借りた超小型のドローンが宙空に浮き、周回し始めた。静かに飛んでいく。ドローンのカメラとアオイが同期される。スオウ達の居所が手に取るように分かるのだ。

直ぐにコンテナの陰にいる彼らの姿を発見した。
「あんなところにいる。とても怖がっていると思う。だって命の危険があるんだもの」
タケルは何も言わなかった。

アオイは彼を見つめる。
「私が交渉する。ホームが奪ったあの人の資産を上回る手数料が入る。スオウさんも納得する。納得しない時は…子供を利用する」

スオウの息子のソラが新宿のカフェに到着したのだ。ドウガミ親子は快く迎え、ソラもまた快適に時を過ごしているようだ。とうとう子供を手中に収めた。プランBを発動出来る。

「ね?タケル…。元はスオウさんの資産を奪った事から始まったんだよ?あの人だってうちを恨んでいるんだよ。それをまた恨まれるような事をして脅すんだよ?もう良いじゃない?ね?」

タケルは溜息をつく。
「ヒロトも死んだぞ?」
アオイはイヴからヒロトの情報を得ていた。
「そう。いっぱい死んだのよ…」

アオイはドローンを戻すと、宙空に浮かせた。
「この画像を見て」
ドローンから立体画像が投影された。タケルと側にいたエリカが見上げた。

新宿歌舞伎町のクラブ夢幻の映像が浮かぶ。多くの警察や救助隊が忙しなく動いていた。客達は泣き、項垂れ、歩くのも覚束ない。黒いカバーに包まれた遺体が何十も並んでいた。

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