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アンドロイド転生914

2118年10月31日 午後
カガミソウタの邸宅 地下の一室

ソウタはゲンの頸のソケットにUSBを差し込んだ。直ぐに彼のメモリにフォルダが落ちた。それはゲンが作った悪意のプログラム。ソウタは本人に仕込んだのだ。

ゲンは怯えて悲鳴を上げた。
「デリートしないで下さい!」
ソウタは心底呆れたような顔をする。
「マジでお前ってキモいよな」

ウィルスプログラムの発動の流れはこうだ。フォルダを削除する事でコピーが作られカウントダウンを始めるのだ。ゼロになった時、解凍されて警告音が鳴り宿主は苦しむ事になる。

「まさかデリートしたら発動するなんてよ。だって誰だって消したくなるもんな」
「だ、旦那様。お許し下さい。お助け下さい」
「ミオもそうやって泣いたよ」

何度もミオのメモリに落ちた。その都度、ソウタも家族も協力して彼女を救うべく力を尽くした。だが敵わなかった。ミオは狂い、死んでしまった。悪意の犠牲になったのだ。

ソウタは深々と溜息をついた。
「お前よぉ…何でこんなモン作ったんだ?」
「ほ、本当は…マ…マサヤのコンピュータに仕込むつもりでいたのです」

「ああ。あのバカ息子か」
「ええ。スオウトシキの長男で…彼は能力が低い割に…横暴でした。人間に甘んじてて…父親の傘の下でいい気になっていたのです」

ゲンは語った。嫌気がさして逃げ出したかった。それにゲンは戦士としての自分のアイデンティティに疑問を持っていた。やらねばやられるというギリギリの暮らしがうんざりだった。

ソウタは神妙な顔をする。
「確かにお前は人間の余興の為の存在だ」
リツの顔も沈んだ。
「酷いよな。人間代表として謝るよ。すまない」

ゲンは涙を零す。そう。人間は残酷だった。だからいつか逃げる。そしてウィルスプログラムを置き土産にするつもりだった。しかしゲンはミオに使った。妹の復讐と言う大義名分で。

リツの瞳に悲しみの色が浮かんだ。
「俺は…ミオを…助けたかった」
ゲンは頷く。
「ええ。そうでしたね…」

半年前。ミオを救うべく、リツはゲンの元へ向かった。ゲンはホテルのプールで人間の女と意気揚々としていた。そして主人ではないリツの言葉に耳を貸さなかったのだ。

一転してリツの顔が憎しみに歪んだ。
「お前は望み通りクラブから逃げ出したんだ。だから自由になって幸せになる事だって出来たんだ。なのに…よくも酷い事をしてくれたな…」

ソウタは呆れたような顔をする。
「自意識が生まれたんだろ?だったらもっと利口になりゃ良かったんだ」
「は、はい。その通りです…!」

ゲンは土下座して床に額を擦り付けた。
「申し訳御座いませんでた。許してください。お願いします。改心して旦那様に尽くします。本当です。信じて下さい」

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