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アンドロイド転生457

青海埠頭

東の空が白んできた。朝日が雲に反射する。星々の光が薄くなってきた。長い夜が終えようとしていた。だがホームとヤクザの攻防は続く。アオイはホームの代表となりスオウと交渉していた。

だがスオウはアオイの提案に乗らなかった。奪われた資産は彼の誇りなのだと言う。金銭の問題ではない。人との約束を違えてしまった事が許せないのだ。だからホームに復讐をしたい。

スオウは顎を上げて腕を組んだ。
「それにな。ヤクザとしてのプライドもあるんだ。爆弾取引の仲介者など、人が描いた計画にホイホイ乗ると思うか?馬鹿にするな」

アオイは唇を噛んだ。スオウはプランAで納得しない。サツキの言った通りだ。交渉にはふた通りは用意しろと。飴と鞭を計画せよと。そうか。では…結局はソラを使う事になるのか。

アオイはスオウを真っ直ぐに見つめた。
「納得しませんか?嫌ですか?」
スオウは鼻で笑った。
「残念だったな」

コンテナの陰で父親の様子を見ていたマサヤは舌打ちをした。
「親父!あんな事を言いやがって!何が誇りだ!マシンが襲ってきたらどうすんだ?」

クレハは小馬鹿にするように唇を歪めた。
「ビビリのあんたにはあの人の気持ちなんて分からないわよね。情けないね。ホントに!」
「煩せぇ。ババア」

マサヤはスオウの側近のトミナガを見た。
「おい。親父を何とかしろ。全く面倒くせぇ」
トミナガは話の内容が頭に入らなかった。さっきから目眩がしていた。

彼は舎弟の流れ弾を受けて肩を射抜かれたのだ。タケルと応戦した事で出血が酷くなった。肩から生暖かい液体が溢れてくるのが分かる。これは直ぐにでも処置をしなければならない。

それでも組長と崇めるスオウを守るのだ。トミナガはコンテナの陰から出て歩き出した。だが息が切れた。額から脂汗が滴る。身体が熱い。スオウの背中が二重に見えた。目の前が暗転した。

トミナガが倒れた。全く動かない。クレハは自然に駆け出し、彼の傍に座り込んでゆすった。
「トミナガ!しっかりして!」
彼は呼吸をしていたが弱かった。

「あなた!トミナガが大変なの!死んじゃうかも!もういいよ。終わりにしよう!決着をつけてもう帰ろう!誇りも分かるけど、舎弟が死んだらその誇りもないよ!」

スオウは振り返った。
「やれやれ誇りとは大変なものだな」
「そうだよ!組長は舎弟に責任があるでしょ?助けないと!」

アオイは窺い見た。どうやら人の命が危ないようだ。また我々の戦いの犠牲になる。なんて事だ。今すぐに病院に運ばなければ…!
「スオウさん。私の仲間が連れて行きます」

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