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アンドロイド転生544

オクザワヒカリのマンション

アンドロイドで自我の芽生えたゲンはクラブ夢幻から逃亡し人間の女性と知り合った。一晩を共に過ごし彼女の家にやって来た。その果てには乱行だ。まったく自由で大胆で気儘だ。

タケルは自問する。自由とは何なのか?俺だって自由だろ?たとえ泥棒稼業の片棒を担ごうとも…。そうさ。キリは強制していない。俺の選択だ。だが…。そのせいで争いになった。

タケルの心に迷いが生まれた。彼の表情を読み取ったゲンは微笑んで手を差し出した。
「私と家族なりませんか?一緒に来ませんか?自由になりましょう」

ヒカリは手を叩いた。
「そうだ!そうだ!家族になろう!」
エマはタケルの手を掴んで振り回した。
「まずは手始めにプレイをしようよ!」

プレイとは性行為の事だ。エマもヒカリもマジョリティという類の人間で、人間の男女も問わず、アンドロイドとも肉体関係を結ぶ。乱行する事も厭わない。まるで奔放なのだ。

何を話しても直ぐに性行為に結びつく。一体どんな思考の持ち主なのだ?エマがタケルに抱きついてきた。首に腕を回した。身体を密着させる。エマの豊満な胸がタケルに当たった。

エマの瞳が爛々としており淫靡な色が宿った。その上からヒカリも笑顔で抱きついてくる。タケルはここにいると頭が変になりそうだった。彼女らの自由さについていけなかった。

タケルは2人を引き剥がし、歩き出した。
「帰る。あんたらは好きにしろ」
エマはタケルの背中に飛びつくと笑った。
「連絡してね!待ってるね!」 

頭がクラクラする思いで玄関を目指し、足早にマンションを後にした。建物を見上げた。俺は一体何をしにここに来たのだろう。ミオを救う事も出来ずエマの連絡先を知っただけだ。

タケルはイヴに通信した。
『ミオはどうなった?』
『残念ながらウィルスプログラムはまだデリート出来ません』

タケルは溜息をつく。
『ゲンを捕まえられなかった。見てただろ?』
『はい。ウィルスが変異した以上ゲンの手には負えないそうですね。仕方がありません』

イヴは微笑んだ。
『でもリツは釈放されました。彼らは自宅に到着しました。アリスは暫く新宿にいるそうです。タケル。ホームに戻って来て下さい』

タケルは気弱に頷いた。
『勢い込んでこっちに来たけど、結局はミオを助けられなくてごめんな』
『いいえ。あなたは出来る限りの事をしたのです』

タケルは車に乗り込むとホームを目指した。そう。帰るところは俺の家だ。家族が待っているんだ。ゲンの自由など不確かなものなどいらない。俺は今だって自由だ。幸せだ。そうだろ?

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