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アンドロイド転生258
2117年12月30日深夜
東京都港区南麻布の住宅街
人通りはない。アオイの目の先にはドーム型の大きな建物が木々の間から遥か遠くに見えた。カノミドウ家の邸宅である。白い屋根が月夜に反射していた。アオイの胸が高鳴った。
何度もこの家にはパーティで訪れた。懐かしい思い出が蘇る。屋敷内にはアンドロイドとシュウ1人。家人は旅行中である。やっと再会出来る。最後に逢ったのは今から12年前の事だった。
120歳を超えた老齢ではあるものの平均寿命は140歳になり、現代の医療技術ではアルツハイマーは完治する。きっと彼は明晰でいてくれる筈。今日こそはアオイだと伝えるつもりだ。
タケルがゴーサインを出し全員が塀を乗り越えた。庭には誰もいなかった。ターゲットの家では悪行の末の対策としてボディガードのマシンがいる場合が多かったがここでは備えていないようだ。
闇夜に紛れたアオイ達は無駄な動きひとつなく庭を走り抜け、邸宅の窓際にやって来て周囲を精査した。平和な現代では侵入者対策のアラームなどないが、強奪する先では設置している事もある。
だがこの家はやはり金品を奪われる事など想定していないようだ。これなら易々と邸内に侵入が出来る。トワが窓ガラスを器材で静かにカットした。円形に開けて全員が室内に足を踏み入れた。
案の定、警報は鳴らなかった。タケルは余裕の笑みを浮かべた。一体どんな悪事で得たダイヤモンドなのかは知らないが、この家では何の対策も講じていない。容易く強奪が出来るだろう。
仲間と交信する。
『さあ。皆んな。行け』
全員が頷いて三手方向に分れた。タケルは単独行動だ。ダイヤモンドの在処まで走った。
タケルは1人で建物内マップの3D画像を確認しながら上階を目指した。廊下を歩く執事の熱を感知してやり過ごす。この邸内には5体の派遣アンドロイドがいるらしい。
上階に到着し、書斎の前に来た。ダイヤモンドはその部屋にある。扉は感知式だ。家人を認識して開くようになっていた。当然作動しない。だが後は待つだけだ。
『書斎に着いた。トワ頼むぞ』
『オッケー』
『ルークもいいか?』
『問題ない』
トワとルークは前を歩く執事を捕まえた。ルークがアンドロイドの背後から首を羽交締めにした。執事が柔術で反撃する場合もあったが、彼はなす術もなく呆然としていた。
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