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アンドロイド転生999

2119年10月10日 夕方
イギリス ヒースロー空港にて

「気をつけてな」
「うん」
リョウとミアが見送りに来てくれた。ルイ達は10日間の日程を終えたのだ。

「楽しかったです!」
ルイの隣で同級生のレナは満面の笑みを浮かべている。リョウと会えたのが余程嬉しかったようだ。遊園地もミアの家族との出会いも。

「リョウさん。今度会う時は、私はルイの彼女になってます!ホントですよ!」
「けどなぁ…ルイはキノコオタクだからなぁ…君はそのうち飽きるかもしれないぞ?」

リョウの言葉にルイは膨れる。
「コンピュータオタクには言われたくない。そもそも…ミアさんは…兄ちゃんのどこが良いの?」
「いっぱいあるけど…」

ミアはリョウを見上げて微笑む。
「リョウはやると言ったら必ず守る。信頼出来る。それはとっても大事だよ」
ルイは頷く。うん。そうだ。大事なことだ。

リョウが笑った。
「キリ達にヨロシク言ってくれな。いつ帰るか分かんないってのも伝えてくれ」
「うん。分かった」

ルイは頷いた。そりゃそうだよな。ミアがいるんだもん。日本になんて帰りたくないよな。もしかしてずっとイギリスで暮らすのかもな。そしていつか結婚すんのかもしれない。

ルイはつくづく感心する。平家の血を絶やしたくないという父親達の思いが身を結ぶのかもしれないのだ。いつか誰かと結ばれて新しい血が繋がっていく事を望んでいる。

しかもリョウは日本を飛び出した。平家の血は世界に広がるかもしれないのだ。凄い事だと思う。けれどそんな血筋など関係なく、リョウとミアはずっと仲睦まじくいて欲しかった。

ミアがひたとルイを見つめた。
「私…きっとホームに行くね。リョウのお父さんとお母さんに会いに行く。リョウのルーツが知りたい。あと…キリとタカオにも会いたいの」

ルイは嬉しかった。笑顔になって何度も頷いた。自分にとっては両親だがリョウにとってもキリとタカオは特別な存在なのだ。オタクだった彼の唯一の理解者なのだから。

教師アンドロイドがやって来た。
「時間ですよ」
返事をするとルイはリョウ達を振り返った。
「じゃあ行くな。2人共元気でな」

するとミアが両手を広げてルイに抱き付いた。
「ルイ。会えて嬉しかった。元気でね」
「う…うん。リョウ兄ちゃんの事ヨロシク…」
「OK!任せて」

抱き付かれてドキドキしたもののミアの笑顔が屈託なくて本当に綺麗で嬉しくなった。2人をずっと応援していきたいと思う。
「楽しかった!またな!」

ルイとレナは歩き出すと何度も振り返り手を振って別れを惜しんだ。リョウ達の振る手がどんどん大きくなる。最後はジャンプして万歳していた。去る者、見送る者の共通は笑顔だった。

・・・

1時間後。リョウ達は見送りデッキで旅客機を眺めていた。日本に向かうジャンボ機だ。
「行っちゃったぁ」
「だな」

ミアはリョウを見つめた。笑っている。
「私…あなたの家族に会えてホントに嬉しかった。リョウのオタクの話も聞けて面白ろかった。頭ボサボサ。服ヨレヨレ。信じられない」

リョウも笑っている。
「ルイめ。余計な事を!」
2人は見つめ合うと軽くキスをする。リョウはすっかり慣れたのだ。人は成長するのだ。


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