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アンドロイド転生518

ホテルのプールにて

ヒカリの瞳が自信ありげに光った。
「私はマジョリティよ」
マジョリティとは人間の男女もアンドロイドも恋の対象という類の人間の事だ。

ヒカリが好色そうに笑った。
「ね?じゃあさ?あんた私とヤッてみる?満足させてくれたら協力してもいいよ」 
「な、何だと…?」

ヒカリの瞳が煌めいた。
「あんたはジェネなんでしょ?マシンとしかシタ事がないんでしょ?あんたの彼女は満足させてくれるの?どう?人間も知ってみない?」

リツの頬が強張った。プライベートな事をこんなにずけずけと言う人間など初めてだ。
「ね?それともゲンと3Pする?あ!あんたの彼女も連れて来たら?私は男も女もオッケー」

リツの顔が怒りと羞恥で赤くなる。アリスを馬鹿にされたように感じた。ヒカリはさも可笑しそうに笑い出した。足元がよろけた。プールサイドにいた為、水の中に転げ落ちた。

ヒカリは激しく水飛沫を上げて没するとまもなく水面から顔を出した。顔を拭い髪をかき上げると怒りを露わに叫んだ。
「ひ、人殺し!誰か!コイツを捕まえて!」

ずっと成り行きを見守っていたプールの客達が我に返り男性達がリツに走り寄ると腕を掴んだ。リツは呆然となっていたが直ぐに叫んだ。
「何もしてない!勝手に落ちたんだ!」

リツが逃げようと踠けば踠くほど人が増えて来て、リツを捕らえた。しまいには捩じ伏せられて床に押さえ付けられた。
「やめろ!離せ!」

ヒカリはプールサイドに戻ると全身から水を滴らせていた。女性がタオルを背に掛けた。
「みんな見てたよね?私に暴力を振るったのを!人殺しよ!警察に連絡して!早く!」

フロントアンドロイドがすぐさま警察に通報をした。ゲンは騒ぎに気付いてプール内に戻って来た。ヒカリはゲンの胸に飛び込んだ。
「コイツが突き飛ばしたの!怖かった!」

間もなく警察がホテルに到着した。水着のままガウンを羽織ったゲンとヒカリは別室に連れて行かれ事情聴取をする事になった。リツは後ろ手に手錠を掛けられてホテルから連行された。


東京都葛飾区:カガミソウタの邸宅

ソウタは顔を歪めた。彼の部屋の宙空には立体画像が浮いていた。ペニンシュラホテル内の様子が映っている。リツ達の動向をフロントアンドロイドをハッキングして見守っていたのだ。

悔しそうに何度も拳をデスクに打ちつけた。顔を真っ赤にしている。
「リツ〜!くそ〜!なんて事だ!」
スミレも怒ってテーブルを叩いた。

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